ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

外村仁氏は、なぜ愛車のテスラを
新しいモデルに買い換えたのか

何もかもが常識はずれの納車式に密着

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第112回】 2016年4月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
4
nextpage

“コンフィグの罠”にはめる
巧みな仕掛け

5シートか6シートか、はたまた7シートか

 そのオプションだが、ここで外村氏はさらに悶絶した。外村氏は、2台のテスラ車を買った経験から、オプションを選ぶ際にテスラの「コンフィグ(コンフィギュレーション)の罠」がいくつもあるのを痛感した。「モデルX」の場合は次のようなものだ。

 まず、「モデルX」には価格帯の異なる3モデルがあるが、基本価格のベースモデルはこれまでモデルSに乗っていた自分には魅力がなさ過ぎる。価格が高い方の2モデルを精査したところ、モーターの性能、追加バッテリーのコストなど一長一短があるのがわかる。ただ、これだけはどうしてもと動かされたのは、納車の時期だ。最高価格モデルならば2016年初頭だが、次の中価格モデルは同年半ば以降。早く欲しくてたまらないファンを罠にかける戦術だ。

 次の罠は、シートの数だった。「モデルX」は7シートが売りだったが、何と7人シートまで装備「可能」というだけで、基本価格では5シートしかついてない。6シートにすれば3000ドル、7シートにすれば4000ドルとなる。こちらも7シートを選んで4000ドル也。

 3つめの罠は、先述した自動ドア機能だ。カーボン・フィルター、車内LED照明、レザー使いのインテリア部分などが同じパッケージに含まれている。どちらでもいいものの中にとても欲しい機能が含まれていて、仕方なく追加してしまうという罠だ。

 これらオプションは数百ドルなどという選択肢はなく、選べばどれも数千ドル単位で最終価格が膨らんでいく。3モデル間の基本価格差は数万ドルだ。ゼロの数が多い。しかも、そうしたオプションを、実際の車を見ることなく選ばなくてはならなかったのである。

 外村氏は、日常生活では「1ドルや2ドルのクーポンを大切に使ったりする」タイプなのだそうだ。それがテスラではケタはずれに大胆にならざるを得ない。

高いモデルほど納車が早い

外村氏が苦悩した「モデルX」の3つの選択肢。結局最高価格の「P90D」を選んだ

 テスラは、最初に基本価格10万1500ドルの「ロードスター」を発売し、次に7万ドルの「モデルS」、さらに8万ドルのSUV型「モデルX」を発売、そして先頃新たに3万5000ドルの「モデル3」を加えた。基本的には、高いモデルから上がった売り上げで後続の安いモデルの開発と製造をサポートする。

 外村氏は、この同じ構図がひとつのモデルの中でも成立していると見る。高価格のモデルを買う客には早く納車する。驚いたことに、「モデルX」の最高価格モデルを買っても、シートを基本形の5つのままにすると、納車が中価格モデルと同じになってしまう。また、オプションの中にはソフトウェア・スイッチをオンにするだけに数1000ドルかかるものもあり、よくわかる客にとっては解せないところもあるはずだ。

previous page
4
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

IT&ビジネス 業界ウォッチ

IT業界で話題の新サービス・新製品のニュース、これから話題になりそうな新ツール、知っておきたい各種の統計調査……などなど、経営効率化に寄与するIT業界の今のうごきをレポートします。

「IT&ビジネス 業界ウォッチ」

⇒バックナンバー一覧