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外村仁氏は、なぜ愛車のテスラを
新しいモデルに買い換えたのか

何もかもが常識はずれの納車式に密着

瀧口範子 [ジャーナリスト]
【第112回】 2016年4月11日
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「モデルX」に乗って家路へ

 こうして外村氏が納車担当者の説明を聞くうちにも、他の顧客は次々と新車に乗り込み、笑顔のハッピーカスタマーとなって工場を後にしている。中にはティーンエージャーかと見まがうような中国系女性もいた。

 この頃、夜に予定されているイーロン・マスクの「モデル3」発表に合わせて、各地のテスラ・ショールームでは予約販売がまもなく始まろうとしていた。サンホセ近くのハイエンドなモール内のショールームには1000人以上の行列ができたとのことで、担当者が嬉しそうにツイッターに上げられたビデオを見せてくれる。ここにも、否応なくその興奮が伝わってくるようだった。

 もうひとつ、今回の購入で外村氏が気づいたのは納車担当者たちの混乱ぶりだ。その日外村氏の納車担当になったのは、社内の「Cクラス(最高経営幹部)」の直属部下にあたる人物で、その日の全社を上げた奮闘ぶりが感じられた。だが、それ以外では入れ替わり立ち替わり社員が近づいてきて、さまざまなことを言っていく。人海戦術というよりは、少々混乱気味だ。メールでのやりとりでも、オプションを選んだ後、ずっと先に予定されるはずの納車の連絡がいきなり来たり、そのメールが錯綜したりしていたという。

 「企業の全パワーが一定だとすると、テスラは今、丁寧な電話やアフターサービスにかけるパワーがない。そんなことをするとイノベーションができなくなってしまう。開発には優秀な人材を集めたが、納車担当者は急に寄せ集めたのではないか。日本では客が完璧なカスタマーサービスを求めるが、会社としては安全性とイノベーションという最低の基本型からスタートして、学びながら向上させていく、こういうやり方があってもいいのではないか」と外村氏は見る。

 この日、テスラが予約販売を開始した「モデル3」は、24時間で18万台の注文を受け、その後4月2日が終わるまでにその数は27万6000台になったと、イーロン・マスクはツイートしている。外村氏は、この3月31日は「テスラがアップルになった日」だと言う。テスラ人気が、広く一般へ一気に飛び火したのだ。

 買ったばかりの「モデルX」に乗って、外村氏はテスラを後にした。折しも帰宅のラッシュアワーでハイウェイは混み合っている。さっそくのオートパイロット機能は試せただろうか。

最後にオチが待っていた。自宅ガレージの幅が狭く、センサーが感じ取って呼び出し機能がここまでしか働かない。ガレージ改造を思案中

 

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瀧口範子
[ジャーナリスト]

シリコンバレー在住。著書に『行動主義: レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家: 伊東豊雄観察記』(共にTOTO出版)。7月に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』(プレジデント)を刊行。

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