計量可能な能力だけが
評価上、ハバをきかせている

「組織って、超優秀な人間でないと、生きていけないものなのかな?」
知人で、ある新興企業グループの取締役を務めるAさんが、こう私に尋ねました。

「どういうこと?」
「うちに、かなり優秀な30代の女性がいるんだけど、彼女は仮に転職しようと考えたとすると、マーケットで評価されないんだよ」

 Aさんは、かつて転職エージェントに勤務した経験があり、人材ビジネスに精通しています。

 「MBAを持っているわけでもなく、英語が堪能なわけでもない。彼女の能力って、知らない領域の業務でも、自分で調べて、なんとか処理してしまうことにあるわけ。そういう意味ですごく優秀なんだけど、転職マーケットでは評価されない」

「その社員は、外に出たいと考えてるわけ?」。私はAさんに聞きました。

「そういうわけじゃなくて、まあ一般論として考えてくれればいいんだけど、組織って、そういう“なんとか物事を解決してしまう人”って必要じゃない?資格や華麗なキャリアのあるなしに関係なくさ」

 企業の取締役として厳しいビジネス環境に耐えながら、Aさんは望ましい組織のあり方について、日々、自問自答を繰り返しているようです。

「ぼく自身、すごい資格とか、客観的なスペックなんてないわけさ。なにかよくわからない調整ごとは、とりあえずなんとかしちゃいます、っていう能力が最大のウリで、これはなかなか人にはまねできないとは思ってるけどね」