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戦略は歴史から学べ
【最終回】 2016年4月28日
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鈴木 博毅

「学習する組織」はこうして生まれる
アメリカがベトナム戦争後に進化させたこと

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ベトナム戦争の苦戦から、アメリカは「戦闘での優位」が必ずしも全体の勝利に結びつかないことを学ぶ。そこで「ベトナム戦争で見えた問題点」を解明すべく、トップダウンではない「中間層」による新たな戦略創造が進められた。戦場の形が変わり続けるビジネスで、学習する組織はどのように生まれるのか?今も昔も変わらない不変の勝利の法則を、ビジネスでも応用できるようにまとめた新刊『戦略は歴史から学べ』から一部を抜粋して紹介する。

【法則15】どんな組織も変わり続けないと生き残れない

湾岸戦争で、なぜ多国籍軍はベトナムの二の舞にならなかったのか?
ベトナム戦争で苦難の戦いを経験したアメリカは、失敗から自信を喪失する。新たな飛躍を生んだのは、実戦経験を積んだミドル層の横断的な戦略模索だった。泥沼の地上戦が予想された湾岸戦争で、米軍と多国籍軍はなぜベトナムの二の舞を避けられたのか。

拡散する地域紛争と米ソ冷戦の終結、そして自らへの疑問

 第二次世界大戦の終結で民族独立の運動が世界に広がります。アフリカ大陸は複数の部族、異なる宗教が混在し、大戦後は民族独立と併せて激しい内戦が展開されました。中東地域では、イスラエルとアラブ諸国のあいだで1970年代まで数度の戦争が行われます。この戦争は各国が双方へ軍事支援を行い、大規模なものとなりました。

 アメリカとソ連を中心とした冷戦は、朝鮮戦争やベトナム戦争へも大きな影響を与えました。しかし軍備拡張を競った二大国は膨張する軍事費に苦しみ、やがてソ連の最高指導者となったゴルバチョフの改革で、1989年に米ソは冷戦の終結を宣言します。

 中東の産油国であるイランとイラクは、1980年9月に国境紛争から戦争に突入。8年間繰り広げられた両国の戦争は、のちの湾岸戦争のきっかけの一つとなりました。

 アメリカは長く苦しんだベトナム戦争で傷つき“ベトナム・パラダイム”と呼ばれる思想が広がります。それは軍事介入について極めて慎重で消極的な思想でした。

 「アメリカ国が軍事行動で成功をおさめることができそうな場合でも払う犠牲は極めて大きいだろうから、自分たちは、かかわりたくない。それに今は軍事力よりも経済力のほうが重要な時代であるから、軍備や戦争に金を注ぎ込むのは、自滅への道を歩むことになるのではないか」(リチャード・P・ハリオン『現代の航空戦 湾岸戦争』より)

 一方で「ベトナム戦争で見えた問題点」を解明して、改革を目指す勢力も出現します。以下は、ある将校の言葉です。

 「陸軍の改革を手がけねばならない。ヴェトナム戦争は一つのよい結果をもたらした。それは、軍のいろんなやり方に疑問を抱かせてくれたことだ」(前出書より)

『現代の航空戦 湾岸戦争』は、ベトナム戦争の教訓を主に3つ指摘します。

(1)みずから不利な均衡(消耗)を生み出す戦い方をした
 小出しに航空戦力を使用して被害が増加したこと。北ベトナムが全面勝利を目指して戦っていた頃、米軍は戦線拡大を防ぐため配慮した航空作戦を実行したことを指す。

(2)戦場からはるか遠く離れた場所の役人が日々の作戦や戦術を指導した
 毎週火曜日のホワイト・ハウスの昼食会で攻撃目標や交戦要領が決められ、その決定もくだらない理由で目まぐるしく変更された。最前線の戦果は当然低かった。

(3)核戦争に合わせていた航空機の被撃墜の多さ
 朝鮮戦争では一機の米軍機で10機を撃墜したのが、ベトナム戦争では米軍一機で敵一機と大幅に悪化。核戦争を想定した飛行機は空戦が苦手で訓練も不足していたのです。

 米軍は感情的な敗北論に流されず、有効だと証明された2点にも着目し発展させます。

(1)レーザー誘導爆弾の精密攻撃
 ベトナム戦争後期は誘導型の投下爆弾が使用されます。2万1000発のレーザー誘導爆弾のうち80%が命中(陸上戦闘部隊を航空支援する際にも、有効性が強く発揮された)。

(2)トップ・ガン課程を1972年に開校
 ベトナム戦争での教訓から、海軍は優秀な戦闘機乗りを育成するトップ・ガン課程を開講します。空軍も実戦に近い模擬戦を行う課程を創設して研究を始めました。アメリカの戦闘機はその後の世界の紛争で優位性を実証し、次第に自信を深めていきます。

トップダウンではなく「中間層の熱意」で新たな戦略創造が進められた

『現代の航空戦』に“戦闘機マフィア”なる言葉が出てきますが、ベトナム戦争を経験した空軍関係者を指します。彼らは横のつながりを最大限活用して意見を形成します。

 「70年代になされた改善は主として軍のなかから湧きあがる発意に基づいたもので、『中間管理職』レベルのイニシアティブを、ヴェトナム帰りが『二度とあんな事は繰り返すまいぞ』と強力に後押しし、ヴェトナム時代の手続き、組織、ドクトリン、装備等の不備を改善する努力をしたのである」(前出書より)

 ベトナム戦争後、米軍内では公式・非公式を問わず、また縦割りではなく実戦を経験した者の横のつながりで、新たな戦略発案をするグループが複数形成されています。新たな戦略と戦術を追求して、巨大組織の中から殻を破る核を彼らが形成したのです。

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