27歳で気づいた、仕事と人生で大事な2つのこと

熊谷 まさに仰るとおりですね。岩瀬さんは今の僕と同じくらい、27歳ぐらいの頃はどうお考えだったんですか?

岩瀬 ハーバードのMBAに行っていたのが、その頃でしたね。でも、その頃は起業しようとかではなくて、そのままニューヨークで働こうかなと考えていました。ファンドで働きたいって。それでヘッジファンドでインターンをしたのですが、そこで2つのことに気づいたのです。 

 1つ目は、僕は一人で仕事するよりチームで仕事するのが好きなんだということ。投資家って基本的に一人なんですね。もう1つは、世の中にインパクトある仕事がしたいなと。

 そのタイミングで谷家衛さんに会って、「投資銀行に行くなんてもったいない。ビジネスアイデアはいくらでもある。僕が応援するからやりませんか。岩瀬くんが成功するのを応援したい。お金は出すから」と言われて。まだ何の実績もない若者にそこまで言ってくれるとは、正直驚きでした。

 いちおう僕も、20代後半で「ハーバード留学記」というブログが大人気だった(日経BP社で2006年に書籍化されている)ブロガーだったので(笑)、ブログの実績だけはありました。あとは、ありがたいことに、BCG(ボストン コンサルティング グループ)の人たちのレファレンスで、岩瀬はすごいみたいなことを元同僚たちが言ってくれていた。でも、実績めいたものは、それだけでした。 

熊谷 まだ実績はそれだけとおっしゃいましたが、どうして谷家さんはそれだけしかなかった岩瀬さんに、そこまでおっしゃったのでしょう?

岩瀬 「だけ」なんですけど、熊谷さんのブログと違って…(笑)、冗談です。結構濃密にハーバード時代を過ごしました、2年間。その濃密な時間とか情熱とか、そういうものがブログを通じて谷家さんに伝わったのかと。

熊谷 ブログを一方的に馬鹿にされて、傷ついています。でもやっぱり、そういうところですか。

岩瀬 でも、それから僕、いろいろな人を谷家さんに紹介しているんです。そこから一緒にビジネスしたり、学校を作ったり(ISAKの小林りんさん)、谷家さんが投資したりといろいろな形でご縁がつながっています。谷家さんからも、「岩瀬くんは、本当はベンチャーキャピタリストなれるのでは?」と言われたりも。