東京湾岸に新しい
「子育て特区」をつくる

 実はこの問題に対し、大いに参考になる国がある。

 シンガポールは547万人が、東京23区ほどの広さに住んでおり、日本以上に少子高齢化が進んでいる。同国では高等教育を受けた知的レベルが高い人に対し、高度な労働で社会に貢献してもらう代わりに、女性を家事や育児から解放する政策が進められている。

nannyシンガポールの子どもたちは、ナニーに見守られ伸び伸び育つ

 具体的には公的な保育施設整備に加え、外国から住み込みの家事労働者(ナニー)を入れている。人口の74%を占める華人はフィリピン人を、13%を占めるマレー人はインドネシア人を雇うことが多い。それぞれ一定の教育を受けた人材を、派遣会社を介して雇い、これに対し費用の全額、月5万~6万円の補助金が国から出る。

 こうしてシンガポールの母親は仕事に専念できるようになった。同国では3LDK程度のマンションに、狭いナニー部屋と専用シャワーが設けられている。

 この政策は日本でも有効でないか。例えば高学歴の共働き世代が多い東京湾岸に子育て特区を設け、フィリピンから子育て経験があるナニーを呼んで住み込みで働いてもらうのだ。もちろん、費用は国が全額補助する。若い夫婦は働きやすくなる上、子どももバイリンガルに育てられる。

 神奈川県や大阪市がこの春から導入するとの朗報もある。しかし費用は利用者負担。これでは根付くまい。また、日本人は家に他人を入れたがらないとの見方もある。が、一昔前の日本にはお手伝いさんも書生もいた。

 保育園を増設することは大事だが、現実的に保育士不足問題を一挙に解決することは難しい。9年後、団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題も控え、介護力不足も一層深刻になる。

 海外からの人材で代替するなら、すぐにでも実験的に始め、課題を解決しながら進めていった方がいい。

 “湾岸子育て特区”が実現すれば、湾岸で「ナニー部屋」付きマンションが新ブームになるかもしれない。

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