巨大メーカーの出現

 先日発表された世界の粗鋼生産量ランキングを見て、愕然とした。世界最大手はアルセロール・ミタル(ルクセンブルグ)であるが、中国の鞍本鋼鉄集団が中堅2社と経営統合し、世界2位に躍進。その他にも、河北鋼鉄集団が3位、宝鋼集団が4位、武漢鋼鉄集団が6位、江蘇沙鋼集団が7位と世界上位10社の内、実に中国メーカーが5社を占めている。

 しかも、中国にはいまだに鉄鋼メーカー約500社が乱立しており、さらに経営統合が進むことは必至である。中国政府も年産5000万トン級の大手6~7社に再編すると宣言している。

 日本の新日鉄は8位、JFEスチールは9位へと後退。新日鉄の生産量は2430万トンにすぎず、近い将来、日本メーカーはベスト10から姿を消す可能性が高い。

 こうした巨大中国メーカーの誕生は、鉄鋼という素材分野に限らない。たとえば、経済成長と共に中国の家庭用エアコン市場は急速に拡大している。2000年の生産台数は1800万台にすぎなかったのが、2008年には8000万台を超えている。

 日本市場は700万台を切っているので、既に10倍以上の規模である。しかも、総人口13億人から考えれば、設置率はまだまだ低く、今後市場規模がさらに膨らんでいくのは間違いない。

 その中で、中国のトップメーカーのひとつである、格力電器の生産台数は年間2000万台に及ぶ。もちろん世界1の規模である。格力1社だけで、日本の総市場の3倍近い生産量を誇っている。ちなみに、日本の最大手、ダイキンの生産規模は500万台にすぎない。

 そして、こうした潮流はけっして中国だけではない。インドやブラジルといった国々からも、その圧倒的な母国市場の規模を背景に、次々に巨大メーカーが誕生している。日本企業にとって、こうした国々は成長市場としての魅力も高いが、その一方で、まったく「体格」の異なる巨大な競争相手が出現していることに、目を向けなくてはならない。