大手銀行の経営者が日本銀行に苦言を呈するのは異例──。メディアは盛んに報じた。4月14日、三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が、日銀のマイナス金利政策は家計や企業の「懸念を増大させている」と言及したからだ。

メガバンクが日銀に異例の苦言 <br />日欧でマイナス金利に非難の声公然と欧州中央銀行を批判したドイツのヴォルフガング・ショイブレ財務相。かつてはタブー視されていたが、今は歓迎ムードだ
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 もっとも、マイナス金利のような実験的政策が実施されている場合、金融業界の幹部が実務の観点から激しいトーンで中央銀行を批判する例は、海外では珍しくない。昨年、スイスの大手銀行トップは激烈な口調でマイナス金利の弊害が国民に及ぶと指摘していた。

 ドイツはさらに激しい。3月10日に欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利の引き下げを含む追加金融緩和策を決定した数分後、ドイツ銀行協会は「この政策は完全に必要がないものだ」と全面否定する声明を発表した。同協会は、昨年12月にECBがマイナス金利を引き下げたときも、直後に次のような声明を出していた。

 「ユーロ圏の資金需要が弱いのは、金利のせいでも流動性不足のせいでもない。でこぼこ道を運転しているときは、馬力が大きい車でも速く走ることはできない。必要なのは道路のくぼみの修復だ。過度に緩和的な金融政策はリスク評価をゆがめ、資産バブルを起こし、改革を遅らせてしまう」