Oくんに100万円を貸すことで、あなたにはいろいろなデメリットが生まれるはずだ。まず、買うつもりだった軽自動車を1年我慢しないといけなくなる。手に入ったはずの自動車をどうして1年も我慢しなければならないのだろうか?

困るのはそれだけではない。本当にこの男は信頼できるのだろうか? もし彼が無類のギャンブル好きだとわかっていれば、1年後に100万円の利息(金利100%)がついたとしても、あなたは貸すのを渋るであろう。「1年後に彼が返してくれるかもしれない200万円」よりも、「目の前の確実な100万円」のほうが価値が高いと考えているわけだ。

なぜ銀行には平気で
100万円を貸せるのか?

「貸すわけない。そんなの当たり前だよ」と思うだろうか?
そう、たしかにOくんに100万円を貸すのは割に合わない

しかし、一方で、大多数の人は銀行に平気で100万円を貸して(預けて)いる。5年定期に入れているという人もいるだろう。このときの金利が0.025%だとすると、5年後の利息は1250円だ。これはつまり「金を返すのは5年後でいいし、返すときには1250円の見返りをくれればいいよ」と言っているのと同じである。

なぜ大学時代の友人であるOくんには金を貸さないのに、赤の他人がやっている銀行には平気で(しかもごくわずかな見返りで!)大金を貸せてしまうのだろうか?

もちろん、銀行がしっかりとお金を返してくれると知っているからである。これをファイナンス用語で信用という。

確実にお金を返せる信用が高い人にお金を貸すとき、僕たちはそれほどの見返りを求めない。信用が低くなればなるほど、求める見返りは多くなる。そうしないと割に合わないからだ。

たとえば、銀行が貸し出す住宅ローンの金利は比較的低い。借り手は住む場所を維持するために、何としてもお金を返そうとするからだ。それに、いざ返せなくなったら担保にしている家を差し押さえればいい。つまり、貸し手としても取りっぱぐれる可能性が低いので、住宅ローンの金利は低くなるのである。