クライアントが納得できる言葉で
面接官に伝える必要がある

 クライアントに対してある提案や結論を提示する際は、常に注意を払う必要がある。あなたの分析や結論の正しさは、機械的に決まるものではない。コンサルタントの提案や結論は、クライアントが受け入れやすいようなかたちで伝える必要がある。

 クライアントと友好的な関係を築くことは非常に重要だ。ビジネスマンの中には優れた判断や意思決定を下すことのできる人も多いが、それでも戦略コンサルタントとしては合格点に遠く及ばない場合が多い。このような人たちに共通するのは、相手がどう受け止めているかという気持ちなどは意に介さず、単刀直入に自分の意見を述べることだ。

 たとえば、自分たちが行った分析作業の内容を示さずに結論のみを伝えても、クライアントは到底受け入れられない。あなたが脳外科医の診療を初めて受ける場合を考えてみよう。脳外科医はあなたの過去の病歴も調べずに、一目見ただけでこう言ったとする。「悪い知らせですが、あなたは死にかけています。2時間以内に脳の緊急手術をしなければ、明日まで命は持たないでしょう。さあ、手術をしましょう」

 このとき、あなたはどう感じるだろうか。普通の人間なら、次のように言うだろう。「冗談じゃない。あなたの手術を受けるなんてまっぴら御免だ。あなたは検査をするどころか、私のことをまだ何も調べていないではないか」

 たとえこの脳外科医の診断が信じられないくらい正しかったとしても、たいていの人は同じような反応を見せるはずだ。もしかしたら、脳外科医はあなたの外見から致命的な脳卒中の兆候を読み取ったのかもしれない。しかしここで重要なのは、脳外科医が、自分の言っていることが正しい理由を患者にも理解できるように伝えない限り、それが事実として正しいかどうかは関係なくなるということだ。

 これはコンサルティングの仕事にも当てはまる。クライアントは、事実として正しいだけでは、コンサルタントの提案を受け入れない。クライアントが受け入れるのは、事実としての根拠に裏付けされ、“自分たちも納得できる”提案である。この“自分たちも納得できる”という条件はきわめて重要だ。それゆえインタビュアーは、単に問題解決の分析能力が優れているだけでなく、相手とのコミュニケーションをうまく取れる人物を求めている。

 インタビュアーは、物事の因果関係を捉えて線形的に思考し、それを言葉で伝えられる志望者を高く評価する(この対極となるのは、思いつくままに発言して話があちこちに飛んでしまう志望者だ)。

 インタビュアーが好むのは、Aという事象からBということが言え、BからはCということが言えるので、AはCにつながるという考え方ができる志望者だ。たとえ最終的には事実に裏付けされた結論にたどり着けたとしても、その過程でAからUに飛び、さらにFからTへ議論が移っていくような話し方をする志望者は、不採用となる可能性が高い。結論に至るまでのプロセスをクライアントにきちんと理解してもらわない限り、その結論が正しいかどうかは無意味となるのだ。

 また、相手がクライアントの上層部にいる経営陣の場合は、彼らがコンサルタントの議論についていけなかったとしても、正直に「理解できない」とは言わないことが多い。彼らはプレゼンテーションの場では、あたかもコンサルタントの発言を理解しているかのようにうなずきながらも、最終的な提案には同意しない。

 なぜなら、本当はコンサルタントの言っていることがよくわからないからだ。それでも、部下の前ではそう思われたくないから、わかったふりをする。クライアントがコンサルタントの議論についていけない場合、その責任は誰にあるのだろうか。仮に、あなたがきわめて優秀なコンサルタントで、あなたの議論をクライアントの役員が理解できずにばつの悪い思いをした場合、責められるのは誰か。関係を維持するために誰か1人がプロジェクトから外されるとすれば、それは少なくともクライアント側の人間ではない。

 この原理原則は、ケース・インタビューにも当てはまる。戦略コンサルタントになることを目指すのであれば、技術的な問題解決のスキルと同じくらい、コミュニケーション・スキルの練習を積むことを私は勧めたい。具体的にどのような点に気をつけるべきかは後に説明するが、ここではひとまず、ケース・インタビューにおいてコミュニケーション・スキルが非常に重要なことを十分に認識しておいてほしい。晴れて内定を勝ち取る人と、最終面接まで進みながら不採用となる人の違いが、コミュニケーション・スキルであるケースは往々にしてある。