会長辞任というお家騒動が世間の耳目を集めたセブン-イレブンだが、本業に目を転じれば、既存店日販が年度ベースで初めて70万円を突破し、相変わらず絶好調だ。その起爆剤となったのが年間930億円を売る「セブンカフェ」。だが、このお化け商品にも意外な弱点があった。

全国展開直後に失速
ドーナツてこ入れにエース投入

 コンビニエンスストアの店舗競争力を示す、最も端的な指標といわれる平均日販(1店舗・1日当たりの売上高)。業界トップを独走するセブン-イレブン・ジャパンは2015年度(16年2月期)に既存店ベースで70.3万円と、悲願の70万円超えを果たした。

 業界2位のローソンは50万円台半ば、ファミリーマートは50万円台前半といずれも20%以上の開きがあり、この差が縮まらない限り王者セブンの独走態勢は変わらない。

 4月7日にはセブンの生みの親である鈴木敏文セブン&アイ・ホールディングス会長の辞任劇が起き、「お家騒動」が世間の注目を集めている。総合スーパー(GMS)であるイトーヨーカ堂の業績も芳しくない。しかし、セブン-イレブンに限って見れば、既存店売上高が44ヵ月連続(今年3月時点)で前年実績を上回るなど、相変わらず絶好調。その大きなけん引役となっているのが、13年から全国販売を開始したカウンターコーヒー「セブンカフェ」だ。

失速したセブンのドーナツ、全面テコ入れは成功したか?セブンの独走態勢を支える「セブンカフェ」。ドーナツは昨夏以降失速していたが、1月のリニューアル後は売上が3割増のペースで推移している

 挽きたて、入れたての味と香りを1杯100円(レギュラーサイズ)という手軽さで楽しめる点が支持され、今では1店舗当たり平均で1日120杯以上を売る。単品で1日10個売れていれば売れ筋とされるコンビニ業界にあって、セブンカフェがいかにお化け商品であるかがわかる。

 15年度のセブンカフェの販売総数は約8億5000万杯、売上高は930億円に達した。コンビニのカウンターコーヒーの市場規模は1570億円程度と言われるから、セブン単独でほぼ6割の市場シェアを握っていることになる。

 しかし、そのセブンカフェにも意外な弱みがある。パンストや傘と同じように単独での購入が多く、他の商品との買い合わせ、いわゆる関連購買が少ないことだ。

 そこで買い合わせ商品として新たに投入されたのがオリジナルのドーナツ「セブンカフェ ドーナツ」だ。14年11月から関西で先行販売されたドーナツは、カウンターに設置した専用什器で販売。価格は1個100円からと、ミスタードーナツなどの専門店に比べて手頃で、当初は1日100個前後が売れる好スタートを切った。

 ところが、全国展開が完了した15年8月頃には早くも失速。てこ入れを任されたのが商品本部のエース、中村功二シニアマーチャンダイザー(当時、現飲料・加工食品部総括マネジャー)だ。中村氏は高級プライベートブランド(PB)ブームの火付け役となった「セブンゴールド 金の食パン」を開発した実績を持つ。ナショナルブランドのパンを大きく上回る6枚入り250円(税込み、当時)という高価格にもかかわらず大ヒットを記録した商品だ。