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国内生損保の16年度運用、欧州債・社債・インフラなど多様化加速

ロイター
2016年5月9日
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4月26日、国内主要生損保の2016年度資産運用計画が出そろった。キーワードは多様化・高度化。低金利に拍車がかかる日本国債や為替ヘッジコストが上昇している米国債を避け、欧州債や、社債、インフラ・ファンドなどより利回りが高い商品の投資を拡大させる傾向が一段と強まった。写真は日本生命のロゴ。2011年4月撮影(2016年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 26日 ロイター] - 国内主要生損保の2016年度資産運用計画が出そろった。キーワードは多様化・高度化。低金利に拍車がかかる日本国債や為替ヘッジコストが上昇している米国債を避け、欧州債や、社債、インフラ・ファンドなどより利回りが高い商品の投資を拡大させる傾向が一段と強まった。ただ、高いリターンには高いリスクが伴う。今後はリスク管理の高度化も求められる。

マイナス金利の円債は「対象外」

 今年度は、ついに10年債までマイナス圏に突入した日本国債の利回り。ほとんどの生損保が、この低金利では運用対象にならないとし、かつてはメーンの投資先だった日本国債の残高を減少、もしくは横ばいとする計画だ。

 日本生命はマイナス金利の国債について、基本的に投資しないスタンス。資産構成比は、これまで円金利資産が7、それ以外が3の割合だったが、今年度の新規配分額の内訳は、ほぼ半々になる見通しだ。今年度の新規資金配分は1兆5000億円─2兆円程度の見込みであり、7500億─1兆円が円金利資産以外に流れる計算となる。

 ただ、生保は保険という長期の円建て負債を抱える。ALM(資産と負債の総合管理)の観点から、円金利資産を大幅に減らすことはできない。そこで償還分は再投資し、残高を維持する運用計画が多いが、20年債でさえ0.3%台という低金利状態では、予定利率を上回るリターンを得るのは難しい。

 円金利資産としては、企業への貸し付けも選択肢だ。しかし、日銀のマイナス金利導入で国内の金利水準が一段と低下。運用担当者の間からは「国内景気の足取りが鈍い中で、資金需要は高まっていないほか、この低金利状態では十分な利ザヤを得ることも難しい」(中堅生保の運用担当者)との声が漏れる。

ヘッジ付米国債以外の投資先開拓

 国内の低金利環境は今に始まったことではなく、国内生損保の多くは、これまでも運用先の多様化を進めてきた。そのメーンが、為替リスクをヘッジした外債だった。特にヘッジ付き米債は、流動性の高さもあって円金利資産の代替資産として位置付けられてきた。

 しかし、最近は、円投/ドル転スワップなどドル調達コストの上昇で、ヘッジコストが急上昇。米国債10年物で100ベーシスポイント(1.0%:訂正)程度まで上昇しており、2%を下回る米10年債の利回りでは、リターンが十分に得られなくなってきている。

 そこで今年度、国内生損保の多くは、欧州の国債や、社債、インフラ・ファンドなどより高い利回りが見込める投資先を増やす計画を立てている。

 第一生命は今年度、ミドルリスク・ミドルリターン分野への取り組みを強化する。プロジェクト・ファイナンスや、インフラ・ファンドなどのインフラ投資のほか、航空機ファイナンスや物流施設等の実物資産投資などで「株式と債券の中間という位置づけであり、伝統資産との分散効果が高い」(運用企画部長の山本辰三郎氏)という。

 東京海上日動火災は今年度、外国債券を500─1000億円程度積み増す予定だが、投資適格級の欧米社債を中心に為替ヘッジ付きで投資する。

 ただ、社債市場でも一部銘柄のスプレッドが急激に拡大するなど荒い動きが発生していることから、米エネルギー関連企業や欧州の銀行といった不透明要素が強いセクターは対象外とする方針だ。

求められるリスク管理の高度化

 ハイリターン(高い利回り)には、ハイリスクがつきものだ。運用の多様化・高度化は、リスク管理の多様化、高度化を必要とすることも意味する。

 住友生命は、ポートフォリオを2つに区分し、リスクコントロールの強化と収益向上を進める。保険金などの確実な支払いに備えた円金利資産中心のポートフォリオを約8割、企業価値の持続的向上に向けたリスク性資産中心のポートフォリオを約2割とする。

 傘下のアセット・マネジメントの活用や、資産運用を担う人材育成に力を入れる生損保も多い。ただ、人材育成などには時間が必要だ。日本国債一辺倒だった時代から、運用手法が急激に多様化、複雑化する中で、リスクを十分に管理できるかは不透明だ。

 一方、こうした運用難の局面で、無理に動くことはないとするバイサイドもいる。富国生命の今年度の運用スタンスは「待ち」。財務に余裕があるからこそできるスタンスだが、いまの低金利環境が2─3年続いても順ザヤを確保できるという。

 そのうえで「もし(想定レートの)105円を大きく下回るようなドル安/円高が進行するような場合は、そのときこそ、(その先の円安転換を見込んで)オープン外債などリスクをとっていく。金利上昇局面もあと1─2年で到来する可能性がある。いまはリスクに合わない投資をせずに、内部資金を厚くするときだ」と渡部毅彦・財務企画部長は話している。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

 

 

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