驚異的なスピードで成長を続ける中国EC(Electronic Commerce、電子商取引)市場。市場流通額は2009年度の2,630億元(約3.3兆円)から、2012年度には9,940億元(約13兆円)に達するという予測もある(iResearch社調べ)。ダイヤモンド社はさる7月20日、中国進出支援サービスを展開するターゲットメディアと共同で、『タオバオ徹底解剖中国ECビジネス・セミナー』を開催。成長著しい中国ECビジネスにおいて圧倒的なシェアを持つ淘宝網(タオバオ)について、最新動向や実務的なノウハウなどを各分野の専門家に解説してもらった。

急拡大する中国EC市場。タオバオを使いこなすのがカギ
――ターゲットメディア株式会社 取締役 齋藤勉氏

「淘宝網(タオバオ)」の市場流通額は約2,083億元(2兆7,000億円)で、中国のEC市場全体の8割を占めます。つまり、タオバオが中国ECそのものです。日本国内に出店代行などの関連サービスが多く、手軽に出店ができるのもその特徴。タオバオへの出店と独自サイトを両方活用することで、効率的な集客ができます。中国EC市場とタオバオについて詳しく説明していきましょう。

圧倒的勢いで中国通販市場を席巻する<br />「淘宝網(タオバオ)」を徹底解剖!ターゲットメディア 株式会社   取締役 齋藤 勉氏

 まず中国のネット人口は2010年6月で4億2,000万人、ECユーザー数は1億4,198万人。ネット人口に対する普及率では33.8%と、前年の26%から大きな伸びを示しています(CNNIC『中国インターネット発展状況統計報告』より)。ただ、米国の普及率は70%、日本は53.6%ですから、まだまだ成長余地があると考えられます。

 都市別で見ると、北京、上海、広東など沿岸部が普及率の上位を占めます。ECユーザーの属性を見ると、月収1,000~3,000元(約1万3,000~4万円)、年齢18~30歳、学歴では専門学校卒以上がボリュームゾーンです(以上、CNNIC『2009年中国ネットショッピング市場研究報告』より)。若年層ほどECに親しんでいる結果で、あと10年も経てば、あらゆる層にユーザーは広がることになるでしょう。

 中国EC市場全体の規模は、2009年2,630億元(約3.3兆円)から、12年は9,940億元(約13兆円)と大きく成長する見込み。ユーザー平均消費額も、09年2,413元(約3万円)から、12年は3,787元(約5万円)と伸びる予測です。12年の段階で、市場規模で日本を上回ると予想されています(以上、iResearch社予想)。中国EC市場進出のお手伝いをしている当社でも、その急成長を肌で感じています。進出するには好機といえるでしょう。

 タオバオを活用したECビジネスには3種類あります。(1)Yahoo!ショッピングを通して「淘日本(タオジャパン)」で販売する方法、(2)オークションサイト「淘宝網(タオバオワン)」で個人取引として商品を販売する方法、(3)ショッピングモール「淘宝商城(タオバオモール)」に現地法人名義で出店する方法。

 (1)タオジャパンを活用する方法は、Yahoo!ショッピング出店者が自動的に出店できることになるので、最も敷居が低いといえます。(2)のタオバオワンも比較的容易で、個人名義での出店になります。パスポートのコピーや中国の銀行口座、中国人の保証人が用意できればすぐに個人アカウントを無料で開設でき、取引が始められます。(3)に関しては法人名義での出店なので、現地法人としての申請が必要になってきます。詳しくはこの後、弁護士の江口先生に解説していただきます。

 また、これらのいずれかの方法と合わせて、自社サイトを開設し、併用するのがベターだと考えます。タオバオを使いこなし、自社サイトへの集客につなげるのです。タオバオのシステムにはSNS、チャットなど各種ツールが用意されています。

 中国人がECサイトで物を買うとき、SNSやチャットを通して店舗運営者と直接コミュニケーションをとって、質問したり値引き交渉をしたりします。こうした商習慣を理解し、ツールを使いこなせば面白いプロモーションができそうです。今後、本格的な進出を目指すのであれば、社内に専用の人材を置いて、各種ツールを使って試行錯誤しながらノウハウをためていくことが重要だと考えます。