老後の25年間で、
老後資金3000万円をどう使う?

では、退職金を手にした人が「先を想像する」と、どうなるだろうか。

65歳時点で退職金と貯蓄を含めた老後資金が3000万円あるとする。大きな病気にかかったときの備えや家の修繕費など「特別支出」のために1000万円は取り分けておくとすると、残りは2000万円。

90歳までの25年間でこのお金を使うとすると、“割り算”を使って2000÷25だから1年当たりの取り崩し額はだいたい80万円になる。月にならせば1ヵ月6万6000円だ。

このようにちょっと計算してみれば、退職金が入ったからといって「使っていい金額」はそう大きくないこと、数年で何百万円も使うなど言語道断であることはすぐわかる。これがまさに「先を想像する」ということである。

「先を想像する」というのは、言われてみればごく簡単なことだと感じるだろう。だが、日々の生活でこれを実践できている人は少ない。

毎月の支払いは年間でいくら? 20年ではいくら?
掛け算ができればわかる!

たとえば面倒くさそう…と手をつけたがらない人が多いが、「保険のはらいすぎ」も将来の家計を圧迫する原因だ。

これも「先を想像する」習慣があれば、早めに気付けるはず。家族で今の保険料を5年、10年と払い続けたら、一体いくらになるか?

仮に掛け捨ての医療保険に月2万円払っているなら、60歳から80歳までの20年間で480万円が確実に手元からなくなるわけだ。

一度“掛け算”を使って計算してみれば、「老後に収入が激減する中で、これほどの金額を払うだけの価値があるのかどうか」と真剣に考えるきっかけになるだろう。

生活費の管理にも、同じことがいえる。通信費が携帯電話、固定電話、子どもも含めた家族の分をすべて足して毎月1万円だったら、1年間では48万円、10年間では480万円。この金額を見れば、「なんとか通信費をカットして、一部は貯蓄に回そうか」という気になるのではないか。

保険料や通信費に限らず、支出は「年間でいくらかかっているか」を掛け算、足し算で計算してみる習慣をつけることを勧めたい。

特に固定費については、手間に見えても、一度見直しをしてカットできれば、家計改善効果が長く続くのでお勧めだ。少額に思える支出が「チリも積もれば」で家計を圧迫していることに気付き、支出を削れるポイントを発見できることもある。