県でも府でもない、もちろん都でもない、「道」という名前が、すでにしてそのユニークさを象徴しているといえよう。道州制が実施されてもここだけは名前を変えずに済むわけだから、150年近く前に、今日を予測していた、というわけではないが、わが国では最も歴史が新しい。

 ただ、それはあくまで今の行政区分というレベルの話で、縄文の頃から人が暮らしていたのは間違いないようである。歴史のスタートが遅れたのは、やはりその成り立ちが大きく影響している。北海道の先住民族であるアイヌを、大和民族は長い間差別的に扱ってきたからだ。

 そうした流れを受け、明治維新政府はこの地を「開拓」の対象とした。そして、開拓の担い手として、最初は罪人たちを送り込み、重労働に従事させる。そのあとでようやく、本州以南の府県から一般人を募り、移民させたのである。その時点で、維新から20年以上が経過していた。

 地理的に近いこともあり、移民の多くは東北、北陸地方からやって来た。信州(長野県)、広島、熊本出身の人も目立ち、北海道人のルーツをたどると、ほぼそのあたりに落ち着くようである。道民の気質にそれら地域の影響が今も色濃く残っているのはそのためだ。

新日本人的=北海道的
自由奔放なものの考え方である

 だが、それ以上に、本州以南に古くから伝わる風俗・習慣にとらわれない、新日本人的=北海道的な気質も早くから培われた。その第一は、来る者拒まず、なんでもOKという、自由奔放なものの考え方である。本州以南に顕著な、ムラ社会のしがらみにとらわれたくないという人たちが最初に北海道にやって来たからだろう。

 そのうえ、北海道は冬の気候が非常に厳しい。家1軒建てるに際しても、古い風俗・習慣にこだわっていると、凍え死んでしまう恐れがある。女性の喫煙者比率、離婚率なども、全国で1、2を争うほど高い(特に札幌市)のも、伝統的な価値観に重きが置かれていないからである。

 近い将来世の中で流行するもの、現象は北海道で見出せる──この、マーケティングの方程式は、そのまま北海道人への称賛を意味しているといっていいだろう。


◆北海道データ◆県庁所在地:札幌市/
道知事:高橋はるみ/人口:552万5509人(H22年)/面積:8万3456平方キロメートル/農業産出額:9809億円(H19年)/道の木:エゾマツ/の花:ハマナス/の鳥:タンチョウ

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