「年金受給年齢になったら必ず年金をもらえる」と考えている人が多いのではないかと思う。ところが、そうはならない可能性が強いのだ。働き続ける限り「保険料を払い、年金はもらえない」という事態に陥る可能性が強い。これは、「在職老齢年金」という制度があるためである。

 この制度を知らないで年金が必ずもらえるものと考えていると、老後の生活設計が狂ってしまうことになりかねない。したがって、注意が必要だ。

在職老齢年金制度の概要

「在職老齢年金」とは、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金の被保険者である場合に、年金額と賃金との合計額が一定の基準額を超える場合に、賃金と年金額に応じて年金の全部または一部を支給停止する制度である。制度は若干複雑なのだが、およそつぎのようになっている

(1)60歳~64歳の場合

・賃金(ボーナス込み月収)と年金の合計額が28万円を上回る場合は、賃金の増加2に対し、年金額1を停止する。
・賃金が47万円を超える場合は、賃金が増加した分だけ年金を停止する。

(2)65歳以上の場合

・賃金(ボーナス込み月収)と厚生年金(報酬比例部分)の合計額が47万円を上回る場合には、賃金の増加2に対し、年金額1を停止する(ただし、基礎年金は全額支給)。

 70歳以降についても、2004年改正により、2007年4月から、65歳以上と同じ取り扱いとなった(ただし、保険料負担はなし)。

 なお、上記の支給停止基準額の「28万円」と「47万円」の額については、賃金の変動等に応じて自動的に改定されるものだ。「28万円」は、標準的な年金給付水準を基に設定されている金額なので、年金額と同様の方法で改定する。「47万円」は、現役男子被保険者の平均標準報酬月額を基に設定されている金額なので、名目賃金の変動に応じて改定する。

 この結果、2010年度の支給停止基準額は、

・28万円については変更なし
・09年の名目賃金の下落が大きかった(▲2.4%)ため、48万円だったものが47万円に改定となった。

 なお、かつては、在職中の場合に一律2割の年金の支給を停止する制度であったが、これは、2004年改正により、2005年4月から廃止された。