中国 2016年5月24日

上海で子どもの教育を機に帰国する日本人が増加

2006年に中国に移住し、蘇州、北京、広州、その後上海に約8年在住。情報誌の編集長を経て現在はフリーランスとして活躍する大橋さん。今年から中国人妻と子どもとともに日本に居を移し、中国と日本を行き来する生活に。その経験から考えた中国と日本の教育観の違いとは?

中国の教育にはびこる悪しき習慣

 今年から日本と中国を行き来する生活になった。息子を日本の幼稚園に通わせるためだ。

 上海に暮らす日本人が帰国を決断するきっかけは、大気汚染などの環境要因が子どもに与える影響もあるが、いちばん大きな理由はやはり教育。その最初の段階が幼稚園ということになる。

 2013年の反日デモ以降、上海に長期滞在する日本人の数は減少の一途をたどっているが、その理由は対中投資の冷え込みや事業縮小といったビジネス的要因だけでなく、教育も一定の割合を占めるのではないだろうか。

 このサイトでベトナム事情の執筆を担当されている中安昭人さんが以前、ホーチミンの教育事情について取り上げていたが、上海の幼稚園にかかる費用は高額だ。日本人向けの幼稚園はいくつかあるものの、費用は年間6万~8万元(約100万~134万円)ほどにもなる。企業から派遣されている駐在員は会社がある程度負担してくれるが、私のように自らの意思で中国に渡った者は、それなりの収入がなければとても通わせられない。

 国際都市である上海にはインターナショナルスクールも多いが、こちらは日系以上に保育費が高い幼稚園も少なくない。となると我々のような庶民の家庭は、一般の中国人が通う幼稚園に入れるしかない。しかし、こちらにも問題がある。

 まず、比較的費用の安い公立幼稚園は、上海戸籍やコネがないと入るのが難しい。中国人でさえ、地方出身者だとなかなか入れないなのが現状だ。私立にはさまざまなランクがあるが、下の方になると安かろう悪かろうの世界。しかも中国には悪しき習慣があり、幼稚園によっては、担任の先生などに「紅包」と呼ばれる心付けを渡さないと、子どもをちゃんと見てもらえない。先生だけではなく、排尿・排便など身の回りの世話をする「阿姨(お手伝いのおばさん)」にも心付けを払わなければ、平等な教育を受けられないのだ。

 以前、知り合いの中国人ママからこんな話を聞いた。中国でも日本のLINEのようなメッセージアプリ「微信(WeChat)」を利用したママ友コミュニティが存在し、ある時、急に家庭訪問実施の知らせを受けた。それは、先生に「紅包」を渡す機会を保護者に与えるためなのだという。こんな不健全な環境では、先生と保護者が対等の関係でいられるわけがないし、この「紅包」を計上すると、結局中国の幼稚園も費用は高くつくのだ。

教育熱の高い中国では、幼稚園に入る前からリトミックなど早期教育の学校に行かせる家庭が多い【撮影/大橋史彦】

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