保険料の控除はたいしたことがない

ちなみに、「個人年金保険は勧めない」と言うと「保険の予定利率は低いが、保険料控除で税金が安くなるから利回りはアップするのでは」と聞かれることがある。

だが、個人年金保険料控除は最大で年4万円だ。保険料を月1万円、年間12万円払ったとしても、控除の対象となるのは4万円までで、残り8万円は切り捨てられる。住民税は、控除は最大で年2万8000円と、さらに切り捨て分が多くなる。利回りアップを期待するほど、節税の効果は大きくないと言える。また、個人年金は途中で解約すると元本割れになる点にも注意が必要だ。現在のように予定利率がかなり低いときに契約すると、「年金受取開始の数年前までに途中で解約すれば元本割れ」という商品が多い。

40歳を過ぎて個人年金に加入すると、保険料払込期間が20年程度と短くなるため、20代や30代で入るのに比べて毎月払う保険料は高くなりがちだ。

契約当初は払い続けるつもりでも、子どもの教育費負担が増す頃になると、個人年金の保険料が重荷となって毎月の家計が赤字に転落するケースが少なくない。「払い続けられないから」と途中で解約すれば、元本割れになってしまう。これでは、「入れば安心な商品」とはとても言えないということをきちんと認識すべきだろう。

深田晶恵(ふかた・あきえ)
株式会社生活設計塾クルー 取締役。
ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、レタスクラブ等でマネーコラムを連載、ほかにダイヤモンド・オンラインでの『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』のネット連載も好評。
主な著書に『30代で知っておきたいお金の習慣』『投資で失敗したくないと思ったら、まず読む本』『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂5版』(共にダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本』(共に講談社)他多数。

この本で伝えたいこと~
「老後不安」を解消するには?

現在、私は、ダイヤモンド社のビジネス情報サイトである『ダイヤモンド・オンライン』で、『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』というマネーコラムの連載をしています。

2014年にスタートして以来、当初の予想を超える反響をいただいており、“老後のお金”について40〜50代のビジネスマンの関心が高まっていることを受けて、連載をベースに新たに書き下ろしたのが本書です。

さて「老後不安」は、どのように解消、または軽減するといいでしょうか。本でも書いたある通り、お金を貯めることはもちろん大切ですが、併せて「将来、お金のことで困るとすれば、どんなことが起こったときか」を知っておくと不安を軽減することができると考えています。

私はセミナーなどで「お金の不安」は、「お化け屋敷」にたとえることができると話しています。お化け屋敷は、真っ暗な中「どこで」「どんなお化け」に驚かされるかわからないから怖いのですね。

でも、たとえば息子がお化け役のアルバイトをしていて「3つ曲がったところで自分がこんな変装して待っている」と聞かされていれば、まったく怖くないはず。お金の不安も同じです。

「これからの人生で起こるかもしれない出来事」をあらかじめ知り、それぞれの対処法を身に付けておけば、不安は軽減されるのではないでしょうか。

本書では、40〜50代のみなさんを取り巻く厳しいお金環境について「これでもか」というほど書いています。本来、私のFPとしてのポリシーは「必要以上 に不安を煽らず、すぐに実行できるアドバイスをすること」なのですが、あえて厳しい現実をお伝えすることにしました。

なぜなら、お金を貯められない人が貯められるようになるのは「危機感」が必要だからです。FPを20年やってきて、貯蓄の多い、少ないは、収入の多寡ではなく「危機感を持っているかどうか」だと実感しています。

「このままではマズイ」と危機感を持ったところで、第3章以降では具体的な対処法を紹介しています。ぜひ、「手を動かして」実践してみてください。

40〜50代の会社員であるみなさんの「貯め期」は、60歳までです。60代も働くつもりでいたとしても50代と同じ収入を得るのはむずかしいからです。この本が、定年後に備えるマネープランにご夫婦で取り組むきっかけとなってくれることを心から願っています。