妻がパートで働くだけで
10年で900万円も家計は改善!

深田 私は長年、企業で退職者向けセミナーの講師も務めているのですが、セミナーを受けた参加者の方たちが「コンサルティングを受けたい」と家計相談にいらっしゃるケースが少なくありません。そこで感じるのが、保険の見直しなどは比較的スムーズに進められる一方で、夫婦間でのお金に関する情報共有はなかなかうまくいかないということなんです。

賃貸派必見!家が欲しい妻を<br />納得させるファイナンス理論<br />対談 第2回深田晶恵(ふかた・あきえ)
株式会社 生活設計塾クルー 取締役 ファイナンシャルプランナー(CFP)、(株)生活設計塾クルー取締役。1967年北海道生まれ。外資系電器メーカー勤務を経て96年にFPに転身。現在は、特定の金融機関に属さない独立系FP会社である「生活設計塾クルー」のメンバーとして、個人向けコンサルティングを行うほか、メディアや講演活動を通じて「買い手寄り」のマネー情報を発信している。20年間で受けた相談は4000件以上。日本経済新聞、日経WOMAN、レタスクラブ等でマネーコラムを連載、ほかにダイヤモンド・オンラインでの『40代から備えたい 老後のお金クライシス!』のネット連載も好評。主な著書に『30代で知っておきたいお金の習慣』『投資で失敗したくないと思ったら、まず読む本』『住宅ローンはこうして借りなさい 改訂5版』(共にダイヤモンド社)、『共働き夫婦のための「お金の教科書」』、『図解 老後のお金安心読本』(共に講談社)他多数。

朝倉 夫婦でお金のことを話す機会は、意外と少ないのかもしれないですね。

深田 たとえば専業主婦家庭の場合、妻が働くことで家計を大きく改善できる可能性が高いんです。仮に、妻がパートで働きに出て年80万〜90万円稼ぎ、それをまるまる貯蓄に回すことができれば、10年間で老後資金を800万〜900万円も増やせる計算になります。老後の準備に少しでも不安があるなら、妻が働くことについて夫婦でしっかり話し合わなくてはならないと思っています。

朝倉 家計運営も企業経営と同様に考えれば「いかにキャッシュを稼ぐか」が鍵になりますから、専業主婦家庭が共働きになれば改善効果は大きいですよね。

深田 働き方についても、夫婦でよく話し合ってほしいところです。一般に、会社員や公務員の妻は年収130万円未満なら夫の社会保険の被扶養者になれるので、「年収130万円を超えないように働こう」ということになります。

 これが2016年10月からは、「週20時間以上勤務」「雇用期間1年以上」「被保険者数が501人以上の企業で働いている」といった要件を満たすパートタイマーの場合、年収106万円以上で社会保険に加入することになっています。

朝倉 いわゆる「130万円の壁」が「106万円の壁」になるケースが出てくるわけですね。

深田 おそらく、パートで働く人は目先の損得で「これまでは年収129万円までOKだったけれど、105万円までに抑えなくちゃ」と考えるでしょう。

 でも、国は女性の労働力向上を目指していますから、今後は配偶者控除や配偶者特別控除など“専業主婦優遇策”は縮小や廃止の方向に進む可能性が高いですよね。こうした方向性をふまえれば、「扶養に入るためだから」と収入を抑えて働くのはもったいない話だと思います。

 先を見据えて社会保険に加入できる勤務先で、少しずつ働く時間を増やして収入アップしていくほうが得策かもしれません。夫からも、「もっと働いてもいいかもしれないよ」などと妻を後押ししたいところですね。