アラブ 2016年5月27日

教えて! 尚子先生
ユダヤ人の定義は何ですか?【中東・イスラム初級講座・第33回】

前回の「ユダヤ教」に続き、今回は謎多き「ユダヤ人」の定義について。中東研究科の尚子先生がわかりやすく解説します。イスラエルという国家の現状も見えてきます。

前回はユダヤ教について簡単に説明しましたが、今回は「ユダヤ人」とは誰なのかという問題について説明してみたいと思います。

 「え? ユダヤ教徒がユダヤ人でしょう? 何が問題になるの?」という質問が聞こえてきそうですが、実はユダヤ人の定義はイスラエルの人々にとって、とても難しく深い問題なのです。

 今回はユダヤ人の定義から垣間見ることのできる、ユダヤ教徒とイスラエルという国家との関係性についても考えてみたいと思います。

外見では判断できない「ユダヤ人」

 おそらく、大多数の日本人にとって、ユダヤ人のイメージは、白い肌に黒もしくは茶褐色の瞳と髪の少女、アンネ・フランクぐらいかもしれません。ですが、ユダヤ人はアンネのように白人のような白い肌の人々だけでなく、黄色い肌や黒い肌の人も含まれます。

 それは、2000年以上前に離散したパレスチナのユダヤ人は世界各地に散らばっているためだけでなく、ユダヤ教に改宗した人々も含まれているためです。

 つまり、外見からその人の宗教がわからないように、ユダヤ人であることを外見から判断することは難しいのです。反ユダヤ主義で知られるナチスですら、戸籍を調べてユダヤ人か否かを判断していたのです。

 では、ユダヤ人とはいったい誰を指すのでしょうか? ユダヤ人とは「ユダヤ人の母から生まれた子ども、あるいはユダヤ教に改宗したものである」というのが一般的によくみられる定義です。ユダヤ教の宗教法(ハラハー)においても同じような定義がみられます。

 この定義、一見何の問題も含んでいないように思われます。確かに、ユダヤ教はDNA鑑定などない古代からある宗教ですから、父親ではなく母親が重要で(父親が誰なのかは究極的には不明であるため)、また前回説明したようなユダヤ教の生活上の決まりごとを守るには、母親が重要になるというのもわかります。

 ですが、よく考えてみると「ユダヤ人の母」とは誰なのか、つまり、母親がユダヤ人であることはどうやってわかるのかという問題が残ります。実は、この説明はトートロジーであって、「定義」ではないのです。

 さらに、この定義に従うと、父親がユダヤ人でも母親が他の宗教である場合、いわゆる雑婚によって生まれた子どもは、ユダヤ人ではないことになってしまいます。

嘆きの壁と岩のドーム=エルサレム旧市街(Photo:©Alt Invest Com)

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