「2009年1月と2月は黒字」。シティグループのパンディットCEO(最高経営責任者)は、3月9日付の従業員向け書簡で業績に胸を張った。

 JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカも同様に1月と2月が黒字であると発表。1時6500ドルを割っていたニューヨークダウは13日には7223.98ドルにまで上昇し、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドも縮小した。金融危機克服も近いという期待が広がるが、実態を精査して浮かぶのは相変わらず苦境に喘ぐ姿だ。

 シティは従業員への書簡とともに業績の現状について、SEC(米証券取引委員会)に報告をしている。

 そのなかで、焦げつき償却や貸倒引当金積み増しなど信用コストを計上する前の税引前利益が83億ドル前後になると示唆している。このことから、「1~2月の黒字も簿価下げ前、償却・積み増し前の数字と想定される」(中川隆・大和証券SMBC金融市場調査部次長)。

 当然ながら、正規の決算では、簿価下げや信用コストも計上する。

 信用コストは08年第2四半期69億8300万ドルが第4四半期には126億9500万ドルとうなぎ登り。非農業部門の雇用者減少数が08年12月以降3ヵ月連続で60万人台を記録するなど史上最悪の水準で推移している現状から見て、09年第1四半期の信用コストが急速に減少するとは考えにくい。これに証券化商品などの簿価下げによる損失が加わることになる。

 シティは米国政府から3010億ドルの資産保証を受けているが、最初の290億ドルまではシティが負担する。83億ドルを上回る損失を計上し、第1四半期の最終損益は赤字になる可能性が高い。

 株価上昇やCDSスプレッド縮小も「売りたてた投資家が黒字化のニュースを材料に買い戻しを入れたにすぎない」(藤岡宏明・大和証券SMBC金融市場調査部次長)との見方もある。市場も業績好転を確信しているわけではなさそうだ。再び株価下落、CDSスプレッド拡大に転じる日はそう遠くない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  竹田孝洋)