2025年までにグローバルで進む雇用・労働のトレンドを提唱。人々の働き方は今後、「仕事の民主化」と「テクノロジーによる強化」によって4つのカテゴリーに分かれるという。


 今日の企業は以前にも増して、境界がなくなり、動きが速く、グローバルで、透明性の高い存在となっている。この傾向は今後さらに進むだろう。

 企業にとって仕事と働き手の重要性は変わらないが、通常のフルタイム雇用ではない契約形態がますます増える。それによって企業のあり方そのものが多様化し、仕事は新しい方法で組織化され、設計され、遂行されることになる。

 この新たな、デジタルによって支えられる「仕事のエコシステム」に、リーダーはどう対応していけばよいだろうか。企業は来たる変化にどう備えるべきだろうか。

 企業の人事担当幹部やその他のリーダーたちによるユニークな協議会、CHREATEから重要な示唆が生まれつつある。このグローバル・コンソーシアムは、人事、雇用の選択肢、人材、企業について再考するために結成された。仕事のあり方が今後どうなるのかを考えるうえで、CHREATEのリーダーたちは変化を推進する5つの根本要因を特定した。

 1.社会関係および組織の再構成

 企業は、ステークホルダーへの透明性を高め、より柔軟になる。権限はより分散され、人的つながりはプロジェクトをベースとしたものが増える。人材は、経済的な理由だけなく共通の目的・意義の下に働く。伝統的な階層や契約に縛られない、ソーシャルネットワークによる外部との協働によって、リーダーシップはより水平的になり、共有化され、集合的になる。

 2.包括的でグローバルな人材マーケット

 女性と非白人系が人材の多数派となる。長寿化が進むにつれて、労働力がさらに幅広い世代で構成される。社会政策によって、伝統的なフルタイム雇用の枠組みを越えた、境界のない働き方が促進される。仕事と働き手を細分化して割り振ることによって、業務の方針や慣行、働き方、給料、手当をより最適化できる。働き手は、ソーシャル空間でつながっている仲間やオピニオンリーダーの意見に基づいて企業を選ぶ。

 3.密接につながり合う世界

 グローバルでリアルタイムに意思疎通できる個人用携帯機器を通じて、仕事はますますバーチャル化され、いつ、どこででもできるようになる。境界を越えた協働やネットワークによって、組織能力が強化される。そしてキャリアと学びのあり方、職場の公平性と魅力が改めて問い直される。

 4.急激な技術変化

 ロボット、自動運転車、コモディティ化されたセンサー、人工知能、IoT(モノのインターネット)などにより、仕事のエコシステムは再構成される。労働力は柔軟性に富み、分散化され、一時的なものとなり、ビジネスの急速な変革に適応する。企業と働き手は不確実性の下で、長期的な賭けと柔軟性とのバランスをとらねばならない。その手段としてオートメーションを導入することで、相次ぐ変化とスキルの急速な陳腐化に対応する。

 5.人間とオートメーションの協働

 アナリティクス、アルゴリズム、ビッグデータ、人工知能によって、かつて人間がやっていた仕事がますます消え去る。しかし同時に、人間とオートメーションが接する部分で新たな仕事が創出される。企業と働き手はこの接点を否定するのではなく、最適化できるよう仕事を考案・設計する。

 これらの潮流は、すべての企業に同じように影響を及ぼすわけではない。したがってリーダーは、自社がいまどこにいて、どこに向かおうとしているのかを理解することが重要だ。そしてこの潮流に遅れずついていくためには、戦略、組織、人材へのアプローチをどう変えるべきかを認識する必要がある。