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サイボウズはどのようにして「100人100通り」の働き方ができる会社になったか
【第19回】 2016年6月7日
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青野慶久

正社員の副業OKと残業禁止が
日本を救う
岩崎裕美子×青野慶久【2】

社員の「市場価値」に応じて給与を決めるサイボウズの人事制度。年功序列ではないため、50歳を過ぎて給与が下がる人も出てきますが、青野社長は「給与を上げるために努力することだけが人生じゃない」と明言します。それは、給与を上げるために市場価値を高める働き方も、プライベートを重視するかわりに高い給与を求めない働き方も、多様性の1つとして認めているということ。

多様性をつきつめるサイボウズでは、さらに副業も認めており、青野社長は「副業は行き詰まってしまった日本のベテランを救う秘策」とも言います。(構成:小川たまか 写真:疋田千里)

「副業禁止」を禁止しよう

青野 副業はですね、日本の行き詰まってしまったベテランを救う秘策だと思います。

岩崎裕美子(いわさき・ゆみこ)株式会社ランクアップ代表取締役社長。1968年生まれ。北海道出身。藤女子短期大学卒業後、JTBに入社し海外旅行課に転属。その後、ベンチャーの広告代理店に転職し、新規開拓営業としてトップの成績を上げ、1999年から取締役営業本部長として20人の営業をまとめ7年で売上20億円まで成長させる。その後、2005年に株式会社ランクアップを設立。ヒット製品である「ホットクレンジングゲル」は累計販売数600万本を超え、現在、社員数45名で75億円を売り上げる。「ほぼ残業しないで10年連続、売上を上げ続ける会社」として新聞、テレビなど多くのメディアから注目され、取材が殺到している。2013年には東京ワークライフバランス認定企業の育児・介護休業制度充実部門に選ばれる(通信販売業界では初)。

岩崎 確かに個人としてのポートフォリオになりますよね。

青野 ある大企業で頑張っていて、いろいろなことに詳しいし、地頭もいいという人でも、年齢が上がると社内では役割がなくなってくるかもしれません。でも、社外に活躍の場を求めれば、すごく価値を発揮できる可能性がある。でも、そういう人が力を出せる場所で働こうとすると、ほとんどの場合、会社を辞めないといけないんですよね。副業を禁止しているから。でもその歳でいきなり会社を辞めるのは、すごく勇気がいります。

岩崎 だから辞められない。

青野 ベンチャーに行くのも相当な勇気がいりますよね、まだ子どもの学費とかも残ってるのに……みたいな。

 だからどこの会社でも、「週4は会社で働いて週1は副業」とか、「週末だけ副業OK」とか、副業を解禁してあげることで、社内で行き場を失っている人たちの次の道が拓けると思うんですよ。そうすると、給料を下げても問題なくなってくる。すごくいい感じに循環が回り始めると思うんです。だから最近は、「日本は副業禁止を禁止しろ」というのが持論なんですよ(笑)。

岩崎 「副業」という発想が全然なかったので、ランクアップでは副業OKにしていませんが、とても納得できます(笑)。サイボウズでは、いつから副業をOKにしたんですか?

青野 2012年からです。原則OKで、副業の届け出が必要ないので全部は把握していませんが、聞いてみたら予想以上にいろいろやっている社員がいて面白い(笑)。最近発見したのはユーチューバー、YouTubeで動画をアップして稼いでいる人。あと、LINEでスタンプを作っている人もいますね。全然デザイン部門じゃない人ですよ(笑)。

17時に帰ると「1日が2つある」

青野 ランクアップさんが特徴的なのは、基本的に残業なしで売上を伸ばしていること。すごい伸び方の業績ですよね。

岩崎 そうですね。2005年に創業して、売上が75億円。今期は90億円ぐらいだと思います。社員数は45人で、「残業してないのにすごいですねー」って、よく言われます。

青野慶久(あおの・よしひさ)サイボウズ株式会社代表取締役社長。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。また2011年から事業のクラウド化を進め、2016年4月時点で有料契約者数は14000社を超える。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『チームのことだけ、考えた』(ダイヤモンド社)、『ちょいデキ!』(文春新書)がある。

青野 めちゃくちゃ働いている会社だったら「ああ、あるよねー」って思うんですけど、残業してない会社でこれだと、すごい生産性と成長率じゃないですか。残業のない会社にする、と決めたきっかけは何だったのですか?

岩崎 私の出産がきっかけです。2009年に出産したのですが、当時はまだ社内に子どもを産んだ社員がいなくて、私が初めて。41歳での高齢出産でしたし、夜遅くまでは働けません。でも、社員を置いて先に帰るのがすごくつらかったんですよ。「お先に失礼します」って言うのが。

 だから社員にも早く帰ってもらうことにしました。私の後に出産するママたちも、帰りにくい社風だったらきっと辞めちゃいますよね。それなら全員を早く帰す。そうしたらママも帰れますから。

青野 真面目で頑張っちゃう人もいたんじゃないですか?「私が残業して頑張ります!」って。

岩崎 そうなんですよ!でもそれをやってしまうと他の人も帰りにくくなるので、帰ってもらってます(笑)。みんな17時が終電だと思って働いていますよ。

青野 17時が終電だと、業務上で困ることってないんですか?

岩崎 やはり締め切りがある仕事をしている人は、19時とかまで残業することもあります。でも、たまにで、ずっとじゃないんです。毎月、社員の残業ランキングも出しているんですよ。

青野 なるほど、見える化しちゃうんだ。

岩崎 はい、それは必ずみんな見ていますね。残業をする人は、なんで残業しているのか、ちゃんと理由が言えればいいんです。それが解決できない定例的な業務になっている場合は、人を手当するとか、アウトソーシングするとかして、必ず改善します。

青野 わかりやすい。残業をなくす「しくみ」ができているんですね。

岩崎 毎日残業をしていた人が17時に帰るようなると、世界が変わるんですよ。1日が2つあるんで。アフターファイブで、社員もいろいろなことをやっています。

ランクアップ式「アウトソーシング成功法」

青野 アウトソーシングを徹底されているという部分について、詳しく聞かせていただけますか。『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』には、アウトソーシング先にも自分たちの企業理念を共有するようにしている、とあります。それは僕らもできていないと思って、お聞きしたいなと。

岩崎 はい。私たちは化粧品の通販を行っていますが、コールセンターや配送、倉庫などの大きな作業をそのままお願いするんですね。一部だけアウトソーシングじゃなくて、丸ごと。そういう形にしないと手間ばっかり残るんですよ。逐一、確認作業をすることになってしまう。

青野 なるほど、なるほど。中途半端に渡すと全部ダブルチェックが必要になって、なんかこっちでやること減ってないぞ……と。

岩崎 そうなんです。ちまちまやると意味がないんです。だから信頼してバーンと任せる。私たちの理念をお伝えして、パートナーとしてやっていく。そのためのミーティングや話し合いを念入りにやっています。「ランクアップだったらどう考えるのかな?」という部分を共有してもらうと、アウトソーシング先からの確認や問合せも来なくなります。私たちに聞かなくても同じゴールを目指してくれるんです。

青野 すごく面白い発想ですね。

岩崎 私は広告代理店の営業のときから、自分じゃなくてもいい仕事はシステムごとアウトソーシングするのが得意だったんですよ。私が営業すれば売上を上げることができるので(笑)。だからこそ、それ以外のことで体力を消耗したくないと言いますか。

 その考えがあるので、社員にも考える仕事をしてほしい。アウトソーシングできる部分は、どんどんアウトソーシングをしてほしいという考えは、ずっと前からありますね。

青野 専門の業者にとっても、ドーンと任せてくれたほうがモチベーション上がりますしね。大抵の日本の大企業って、抱え過ぎていると思うんです。

岩崎 そう思います。

青野 研究部門や工場から総務経理まで、もう全部抱えちゃって、それが素晴らしいことになっている。正社員がみんな、重複するような細かい仕事をやっていたりする。サイボウズでも、ホワイトボードのマジックの交換とかを社員がやっていますよ。みんな真面目だから、ついついやっちゃうんですけど、ランクアップさんのように生産性を上げないとですね。

社内の問題解決は「困ってます」の共有から

岩崎 しつこいようなんですが、また私から、人事評価制度のことについて相談をさせてください。

 私たちは今、複雑期なんです。各部署それぞれに社員を評価するグレードがあるんですが、その基準をつくるのが本当に難しい。通信販売の会社なので、社員数が少ないのに部署がたくさんある。そして各部署によって仕事の難易度も違うので、すごく苦労しています。社員に、「なぜあなたはこのグレードか」ということを、納得感を持って説明することがとても難しいのです。

 早くサイボウズさんのように、人事評価制度がうまく機能するシンプル期に行きたいなと思っています。でも制度の改変も果たしてうまくいくのか、思い切りもなかなかつかなくて。

青野 制度の改革はですね、サイボウズ的には「困ってます」ということの共有から始めるんですよ。「今、複雑になっていてよろしくない気がします。みんなどう思いますか?意見を言ってください」という感じです。

 解決方法は、いったんテーブルに乗せてみないとわからないんですよね。100社あれば100通りだと思いますし。だから「問題だと思うんだけど」っていうところから始めて、その問題を解決する参加者を募る。そうすると、問題解決に向かうプロセスをみんなと共有できるので、結果としてA案になろうとB案になろうと、社員の納得性がすごく高くなるんです。
 

 

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青野慶久 

あおの・よしひさ 1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。また2011年から事業のクラウド化を進め、2015年11月時点で有料契約社は12,000社を超える。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)がある。


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