「炎上が怖い」「眠れない」「何を投稿していいのか、わからない」など、企業のSNS担当者の悩みは深い。せっかく投稿しても読まれなかったら徒労感に打ちひしがれてしまうだろうし、反応が多すぎても、返答に窮する場合がある。

SNSを使ったマーケティング戦略は、近年、BtoCの企業にとっては欠かせない重要な戦略の1つになっているが、実際に成功している企業はそれほど多くないだろう。エイプリルフールの投稿をきっかけに画期的な新商品を生み出すなど、臨機応変なアイディアと機動力で注目を集める山芳製菓の「中の人」、ヲリハラ氏に話を聞いた。(前回の山芳製菓・山崎社長インタビューはこちらから

「わさび抜きわさビーフ」発売は
ツイッターでのウソから始まった

――山芳製菓のツイッターフォロワー数は2016年5月15日現在、約2万7000人。目立って多いわけではありませんが、フォロワーと非常にいい関係が築けているように感じます。見えない相手と良好なコミュニケーションをとるコツはあるのでしょうか。

「わさび抜きわさビーフ」を生んだ中の人が語るツイッター戦略山芳製菓ツイッターの「中の人」ヲリハラさん Photo by Toshiaki Usami

「基本はリアルな会話と同じだと思います。挨拶だけではなくて、ちょっとした記念日をお知らせするとか。『今日はパンの日ですね』と投稿したら、『私、メロンパンが好きなんです』と返ってくる。お客さんを置いてけぼりにせずに、いかにして会話のきっかけを作っていくか、ということを日々、考えながらやっています」

――担当はいつからですか?

「弊社がツイッターとフェイスブックのアカウントを開設したのは2013年の7月7日で、その時からの担当です。当初は2名体制でしたが、今は1人でSNSとブログ、ウェブ周りの更新などを任せてもらっています。

 最初の半年間はやはり炎上への不安もあり、フォロワーさんとの距離感をどう取ればいいのか、そこに流れる空気感を探っていました。今と比べると、ちょっと地味めというか、基礎固めをしていた感じです」

――それが変わるきっかけは、あったのでしょうか。

「2014年の3月に、ある公式アカウントの担当の方が引退されるというので『公式アカウントあるある』という内容のハッシュタグでツイートがされていたんです。送別の意味も込めて、公式アカウントさんたちが盛り上げていて、ちょっと迷ったんですけれど、勇気を出して思い切って投稿してみたんです。それをきっかけにして他企業の中の人たちとのつながりも始まり、タイムライン上で交流するようになってから、世界が少しずつ広がっていった感じです。

 それと、大きかったのはエイプリルフールの投稿ですね。まだ、弊社のツイッターのフォロワーさんが2000人くらいの時です。嘘ネタとして「わさび抜きわさビーフ」というのを思いついて、投稿したんです。これがだいぶ話題になりまして、そこからどんどん面白くなっていきました」