ラオス 2016年6月21日

若きろう者リーダーに聞いた
ラオスのろう者たちの今

約8カ月のバックパッカー旅行後、2001年からラオスに住み、今年日本に帰国した森さん。その森さんでも知る機会のなかったラオスのろう者たちの暮らし。その現状と、日本で出会ったラオスろう協会の若きリーダーの夢とは?

 これまでラオスに15年間暮らしていたが、日常接することがなく、また、恥ずかしながら、そのこと自体を疑問に思うこともなかった。ラオスの聾(ろう)の人々の存在である。

 先日、日本の某大学教授から連絡が舞い込んだ。「研修で来日しているラオス人のろう者が登壇する際に、せっかくの機会なのでラオスをPRしたいと思う。その素材を探している」とのことだった。

 前回、このコラムでも紹介した、日本ラオス映画「サーイ・ナームライ」の予告編を見て連絡をいただいたのだが、「ラオスのろう者と出会ったことがなかった」ことを僕自身が気付かされた。15年もラオスにいたのに。

ラオス語手話の「ありがとう」

 ラオスでの障害者全般に対する世間の目というのは、柔らかく優しい、イメージがある。

 従来ラオスの人々が持つ寛容さは、多様性を許容できる社会を作り上げているように思え、性同一障害やダウン症の人々をラオス社会は上手に受け止めている。その根底には、挨拶ができる、読み書きができる、人前で堂々と意見がいえるなど、日本などで一般的に求められる「人として最低これだけのことをできなければならない(こうでなければならない)」ということがラオス社会ではあまり求めらないからかもしれない。

 人の子として生まれてきたのだから、それでいいのだ、ということなのかもしれないし、ラオス語にある“ボーペンニャン”(なんとかなるさ)の包容性なのかもしれない。ただそれは、時と場合によって、良し悪しの両面性を含んでいるといえるのだが。

ラオスろう協会の若きリーダー

 スピーチでお会いしたのはタタさん(25歳)。2歳の時に失聴し、小学1年まで地域の学校に通うが、コミュニケーションが取れなかったため、ろう学校に転校。そこで手話を習得した。首都ビエンチャン中心部から少し離れた実家に両親、弟2人と5人家族で暮らす。その中で耳が聞こえないのはタタさんだけだ。

パニタ・マイポンさん(通称:タタさん)【撮影/森卓】

 現在はラオスろう協会の副会長を務める。ろう学校を卒業後、1年間タイの障害者職業訓練校に通った。その後、ろう学校で小学部1年生に手話を指導、2010年からろうクラブ副会長、13年にろう協会に格上げされてからも、引き続き副会長を拝命することになった。

ラオスろう協会
2013年設立。2003年に設立された「ろうクラブ」が前身。会員数220人。労働社会福祉省の管轄。ラオスのろう者人口は2005年時点で2万2400人(知的障害者や重複障害者も含まれている可能性がある。手帳がないので正確に把握できていないという)。

 格上げされた「ろう協会」ではあったが、恒常的な予算不足に悩んでいる。国からの財政的な支援がほとんどないのだという。クラブ時代にスウェーデンのNGOから10年間の支援を受け活動費としてきたが、それが満了となり、現在は大きな活動を休止中の状況にある。

 協会が抱えている課題として、予算不足のため、活動の継続性・持続性のなさと、手話通訳者の数が足りないことを、タタさんは挙げた。

ラオスろう学校
ビエンチャンとサワンナケートとルアンパバーンにあったが、現在ビエンチャンとルアンパバーンのみ。小学部と中学部のみ(幼稚部および高校以上はない)。生徒数はビエンチャンで50~60人程度。教師は10人ほど。

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橘 玲(Tachibana Akira) 作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。「海外投資を楽しむ会」創設メンバーのひとり。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』『(日本人)』(幻冬舎)、『臆病者のための株入門』『亜玖夢博士の経済入門』(文藝春秋)、『黄金の扉を開ける賢者の海外投資術』(ダイヤモンド社)など。
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