ダイヤモンド社のビジネス情報サイト

中国で出稼ぎ意欲が後退、色あせる「都会の夢」

ロイター
2016年6月7日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
中国では、数百万人もの国内出稼ぎ労働者に支えられて、都市部の人口増大や消費拡大を維持してきたが、今や国内での出稼ぎは減速しつつあり、遠方にまで移住して仕事を見つけようという労働者の意欲は弱まっている。写真は2013年8月、中国江蘇省南通市の住宅建築現場で働く作業員。チャイナデイリー提供(2016年 ロイター)

[温州(中国)/香港 30日 ロイター] - 起業家の活躍する中国の都市・温州での20年にわたる生活を経て、ある兄弟が故郷に戻ろうとしている。今後、市内でもっとよい家に住めるという希望はないし、それなりの生活のできる賃金を稼ぐことも難しくなりつつある、とJi Shouquanさん、Shoufangさん兄弟は語る。

 中国では、数百万人もの国内出稼ぎ労働者に支えられて、都市部の人口増大や消費拡大を維持してきた。これによって持続可能性の高い長期的な経済成長を刺激し、過去30年間の中国台頭の原動力となった重工業・輸出産業への依存を抑制したいというのが中国の希望である。

 だが、そうした努力を損なうようなトレンドが生じている。国内での出稼ぎが減速しつつあり、遠方に移住して仕事を見つけようという労働者の意欲は弱まっているのだ。

 「収入を得るのは本当に大変だ」と兄のShouquanさんは言う。カラオケ店で音響技術者として働く彼の所得は月5000元(約8万1500円)程度である。「KTVで働いていた6─7人の友人のうち、残っているのは私も含めて2人だけ。大部分は故郷に帰ってしまった」

 弟のShoufangさんはタクシー運転手だが、恐らくもうこれ以上の仕事には就けないだろうと話している。

 兄弟は、コツコツと節約して、すでに故郷の街で家を買える程度の貯金をこしらえている。彼らの出身地は中国東部の一大農業地帯である安徽省の埠陽だが、隣接する浙江省にある温州に比べ、住宅価格は約5分の1である。「私たちのような出稼ぎ労働者が温州で家を買うのは非現実的だ。自分で事業でも興さない限りは」とShoufangさんは言う。

 政府統計によれば、出稼ぎ労働者数は2015年に1億6900万人に迫った。だが、前年比で見ればわずか0.4%と、グローバル金融危機が起きた2009年以来、最も小さな増加率にとどまった。仕事を求めて故郷の省を離れる出稼ぎ労働者数はマイナス1.5%と6年ぶりの減少を記録した。

 中国の総人口約14億人のうち、都市人口の比率は2015年の時点で56.1%だが、政府はこれを2020年までに60%まで増やしたいと考えている。

 アナリストによれば、売れ残り住宅の大量積み上がりは都市化の勢いが衰えていることを証明しているという。出稼ぎ労働者が、故郷の町や村を離れて未来を築くことが難しくなっている。

 下落していた住宅価格が回復する兆候はいくつか見られるものの、公式統計によれば、国内の売れ残り住宅在庫は、4月までの1年間で4.5%増大し、4億5000万平方メートルに達したという。

 中国の国家計画機関である国家発展改革委員会にコメントを求めたが、迅速な回答は得られなかった。

 中小都市の多くで建設された住宅は、本来は、政府の都市化推進政策による需要増大を吸収することを意図したものだった。だが、そのような都市では職を得る見込みも薄く、社会サービスも利用しにくいことから、出稼ぎ労働者たちはあいかわらず国内でも最大級の(そして最も生活コストの高い)中心都市での機会を探すか、あるいは諦めて故郷に戻ろうとしている。

 「都市化は、人工的な都市に頼るのではなく、人間を軸にして進めるべきだ」と語るのは、北京に本拠を置くシンクタンク、中国国際経済交流中心の上席エコノミスト、Wang Jun氏だ。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事


ロイター発 World&Business

ロイター提供、日本と世界の最新ニュースをお届けします。

「ロイター発 World&Business」

⇒バックナンバー一覧