1月19日の会社更生法適用申請から7ヵ月。ようやく日本航空(JAL)は東京地裁に更生計画案を提出した。11月末をメドに認可される見通しだ。

 JALのケースは、債権者などと更生法適用申請前に調整を図る「事前調整型」だったはずだが、実際には適用申請後も金融機関と債権カット率をめぐってもめるなど、関係者をやきもきさせた。

 厳しい交渉は一段落した格好だが、会見で稲盛和夫会長が「絵に描いた餅にならないように」と発言したとおり、本番はむしろこれから。無事に再生するためには、三つの課題が待ち受けている。

 一つ目は利益計画の実行可能性。ここのところ、国際線の旅客数増加などでホッとひと息ついているエアライン業界だが、世界経済情勢は不透明なまま。大規模な経済危機が起こったり、テロやSARSといった流行病が蔓延するなどのイベントが発生すれば、大きく足をすくわれるのがエアラインの宿命だ。

 JALの更生計画案では、3年後の2013年3月期には売上高1兆2733億円、営業利益1175億円との見通しが描かれている。営業利益率は9.2%。世界的に見ても高収益を誇るエアラインに生まれ変わる計画となっているが、「イベントリスクの織り込み方が小さいのではないか」と、厳しい目線で見る金融関係者は少なくない。

 今回の案には、大規模なイベントが発生した際には、企業再生支援機構が追加の財務支援を行うことが盛り込まれているが、こうした支援に頼る羽目になれば、そのぶん再生への道は遠のく。しかも、これは税金だ。

 二つ目は金融機関による融資再開のメドが立っていないこと。「来年3月末までにリファイナンスを行いたい」としているが、今のところ、金融機関側から色よい返事は得られていない。金融機関から再び融資を受けられる体制を整えておかなければ、本当の意味で再生したとはいえない。金融機関に信頼されるかどうかが、今後の大きな課題だ。

 三つ目は2年半後に期限が来る支援機構のイグジット(投資回収)。今回、支援機構はJALに対して3500億円を出資するが、2年半後には再上場するなどして投資資金を回収しなければならない。更生計画案どおりに進めば再上場も十分に視野に入りそうだが、計画数値が未達に終われば、きちんと資金を回収できない可能性もある。そうなれば、税金に穴を開けることになり、大問題だ。

 約4万8000人のグループ社員を1万6000人削減し、大型機材を100機以上退役させて新鋭小型機に入れ替えるなど、厳しいリストラを断行しているJALだが、それでもなお、無事に安定飛行に入れるかどうかは不透明だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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