家族の変化に対応する
ダイナミックな可変性

 住宅が長持ちし、何世代かにわたって住めば、途中で家族の形態に変化が出てくる。これに対応できるよう、可変性が高まっている点が最新住宅の特長だという。

「かつては住戸内部の柱や壁で支えた構造躯体が、今は外周部の柱だけで支えられるようになっています。ですから間取り変更が容易で、子どもが独立したら壁を外し、大きな空間をつくることも可能。高齢化すると1階で生活する時間が長くなりますから、リビングの横に寝室を設けて一体化したような造りが現実的になる。こうした変化に対応しやすくなっているのです」

 また、将来は同居するけれど、それまでにはまだ時間があるといった場合、一部を賃貸や貸店舗にしながら、自分たちの住まいは完全に独立させてプライバシーとセキュリティを守り、将来は貸している空間を2世帯に造り変えるといったことも可能だという。

「少子高齢化が進む日本では、今後2世帯住宅が増えていくことが予測されます。2世帯や併用住宅は躯体がしっかりしていることが不可欠ですが、それとダイナミックな可変性を両立しているわけで、この進化には驚かされます」

ライフラインが止まっても
対応できる設備を搭載

 地震大国の日本では、住宅の地震に対する強度はもちろん、ライフラインが止まった場合の備えも進化しているという。

「電気が復旧するまでの1週間をどう過ごすかに着目した設備を搭載した家が増えています。蓄電池を備えた家も出てきていますし、電気ガス併用の家ならガスで電気を作り、発電時の排熱を利用してお湯を作るエネファームの採用が多くなっている。エネファームは立ち上がるときに電気が必要でしたが、今はバッテリーを積んでいて、緊急時にはガスだけで発電できるようになった。これを備えていると、万一のときに強い」

 エネファームはタンクの中に常時約300リットルのお湯と水をためている。緊急時にはこれを取り出し、トイレの水洗など、生活用水として使うこともできる。また最近は、マンション用のエネファームも開発されている。

「普通のコンセントと、太陽光発電装置やエネファームなど自然エネルギーを利用するコンセントを色分けし、緊急時には迷うことなく後者を使うといった細かな工夫も進んでいます」

 キッチン周りにパントリー(収納庫)を装備した家も増えている。ここに缶詰などの保存食を常備し、食べたら補給するという生活スタイルであれば万一のときに慌てないで済む。暮らし方に防災を取り入れるソフト面での進化といえる。