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勢いづく有機EL市場、装置・部材に商機 厳しい国内勢

ロイター
2016年6月15日
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次世代の薄型ディスプレーとして有望視される有機ELパネルの生産拡大を追い風に、日本の製造装置や部材などのメーカーに新たな商機が広がっている。ジャパン・ディスプレイのロゴ、都内で2013年撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 15日 ロイター] - 次世代の薄型ディスプレーとして有望視される有機ELパネルの生産拡大を追い風に、日本の製造装置や部材などのメーカーに新たな商機が広がっている。米アップルの「iPhone(アイフォーン)」新型モデルに有機ELを採用するとの見方が強まったことなどがきっかけだ。

 ただ、日本企業への恩恵は周辺ビジネスが中心で、有機ELサプライチェーンの主役ともいうべきパネル製造ではサムスン・ディスプレイなど韓国勢が大きく先行。ジャパンディスプレイ(JDI)などの国内メーカーは引き続き厳しい国際競争を強いられそうだ。

 「今は業界自体が活況。今後も市場は伸びていく」──。有機ELパネル製造装置大手、キヤノントッキ(新潟県見附市)の津上晃寿会長は5月、ロイターとのインタビューで、同装置の世界的な供給不足に対応するため年内に生産能力を倍増させる意向を示した。

 有機EL製造に必要な同社の「蒸着機」の生産能力は年間数台とされる。業界関係者によると、日本、韓国、中国や台湾メーカーから注文が集中し、納入まで数年待ちの状況だ。液晶や半導体の製造装置を手掛けるアルバックにも蒸着機への好調な引き合いがあるという。

 米調査会社IHSテクノロジーは、スマホ用ディスプレーの出荷金額が2020年時点で有機ELが液晶を逆転すると予想。同社アナリストの早瀬宏氏は、「iPhoneが有機ELを採用する可能性を高めていることで、有機ELに需要がシフトしていく可能性が高い」(1月の講演)と指摘している。

有機ELの実用化、開拓したのは韓国勢

 有機ELは、自らは発光しない液晶と違い背面から光を照射する「バックライト」が不要。潜在的には液晶に比べ低コストで製造できるとされるが、不良品の発生率など量産の難しさもあり、液晶に比べて普及が大きく遅れた。

 ソニーやパナソニックなど日本のメーカーが有機EL開発を大幅に縮小・撤退する中で、踏ん張ったのが韓国勢だ。

 スマホ向けの中小型有機ELはサムスン・ディスプレイのほぼ独占状態で、6年前から親会社のサムスン電子が有機EL塔載スマホを発売した。テレビ用はLGディスプレーがサムスンとは違う製造方法で大型の有機ELパネルを開発。13年に親会社のLG電子が世界初の本格的な有機ELテレビを売り出した。

韓国勢に協力する日系の装置・部材メーカー

 日本の装置・部材メーカーは韓国勢に協力して市場を開拓してきた。キヤノントッキは蒸着機をサムスンと手を組んで開発した。

 蒸着機で基板に材料を付着させる際に必要となるのが「蒸着マスク」という部材で、大日本印刷が圧倒的なシェアを有している。同社は5月、生産能力を2020年までに3倍に増強すると発表した。

 有機材料では出光興産が有力。同社はLGディスプレーと2009年に提携、12年末には韓国北部の坡州市で同材料を生産を開始し、15年度には年間2トンの生産能力を5トンに増やした。

 LGは今後、テレビ向けを含め有機ELに1兆円投資する計画だ。サムスンも地元韓国などで能力増強すると報道されている。

 サムスンにも材料を供給している出光は、かつては業界全体で5トンに満たなかった有機EL材料の需要が20年代には25トン以上に増えると予想している。

投資に動く後発の日本のパネルメーカー

 日本企業では、JDIと、6月末に台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入るシャープが有機ELを手掛ける計画。JDIは16年度から2年間で茂原工場(千葉県)で約500億円を投資し18年度の量産開始を目指すが、LGなどに比べて金額は大きく見劣りする。

 鴻海は、シャープを買収することで有機ELの量産化に2000億円を投じる計画だ。シャープには、液晶と有機ELのどちらにも使えるの平面パネル「背面駆動基板」技術のひとつ「IGZO」がある。

 4月の会見で鴻海の郭台銘会長は「OLED(有機EL)より(シャープの独自技術である)IGZOのほうがコスト的に優れている」と指摘、液晶戦略も強化する姿勢を示唆している。

有機ELへの傾斜に慎重論も

 有機ELパネル市場はさらに拡大する見通しだが、成長のパイを狙って参入を図る日本勢に慎重さを求める声もある。

 ソニーでテレビの商品開発に従事した長内厚・早稲田大学ビジネススクール教授は、現在の有機ELの活況について、韓国2社のライバル意識による積極投資競争という面があるとの見方を示した。

 長内教授は「日本勢が後追いして一から始めるのは戦略的にナンセンス」と指摘。「投資を早まらない方がよいと思う」と述べている。

(浜田健太郎 編集:北松克朗)

 

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