政権交代への期待を裏切った
菅首相の重大な変節

 本欄で何度も強調してきたように、私が昨年の政権交代に期待した理由は2つあった。

(1)税金の無駄遣い、特に行政内部の無駄遣いを根絶して、一方で中・長期の成長戦略を打ち立てて、財政再建への道筋を開くこと。

(2)官僚人事の人事権を、官僚から政治に取り戻し、“官意”ではなく、“民意”を反映させる政治主導の仕組みに転換すること。

 民主党はこれらをマニフェストでは明確に打ち出したものの、本気でこの公約を実行するかどうかは、正直言って半信半疑であった。

 それにもかかわらず、なぜ私がいささかでもそれを信じて期待したかというと、それは、このテーマをライフワークにしてきた菅直人氏が民主党の幹部として存在したからであった。

 しかし、何と彼は、鳩山政権下においても全くその努力をしないどころか、自民党よりもひどい官僚主導の方向に転ずる主役となった。それが最後には、参院選前の消費税10%発言になり、自ら志を捨てた姿を明らかにした。

 菅内閣は、自らを高杉晋作の「奇兵隊」と称して出発した。

長年、彼は自民党政権を「霞ヶ関政権」と断定して攻撃の先頭に立った。それなら幕府に挑戦した奇兵隊と言ってもよい。

 ところが、菅奇兵隊は、何といつの間にか“霞ヶ関幕府”を警護する“新撰組”に大変身してしまったのである。

 私はかつて、これほどひどい政治家の変節を見たことがない。私の期待は失望に変わり、今では絶望を経て、退陣要求に至っている。