時間をかけて「目の前にあるもの」を発見する

 私たちの多くはこれとは反対の問題を抱えている。気づかなすぎるのだ。それはなぜだろう?普通の人は観察のために必要な時間を取ろうとしないからだ、とIDEOのトム・ケリーは考えている。人が目の前にあるものを見落としてしまうのは、往々にして「見るのをすぐにやめてしまっている」からというのだ。

(中略)

 偉大な「質問家」(クエスチョナー)は状況や問題、周りにいる人々の仕草や自分の行動を「見続けて」いる。

 そして些細なことを研究する。そこに「ある」ものだけでなく、「ない」ものも探す。一歩下がり、横から眺め、必要であれば目をこらして見るのだ。「ヴジャデ思考法」や「見慣れたものをどう見るべきか」に関する論文の中で、サットンは「対象物やパターンを前から見るのではなく、後ろから見てみる」よう助言している。

 アインシュタインは「干し草の山から針を探す」ということわざ〔困難な行為のたとえ〕について話したことがある。ほとんどの人は針を見つけた段階で探すのをやめるだろうが、アインシュタインいわく、大事なのは、そこからさらに優れた針を求めて探し続けることなのだ。

(本連載は、書籍『Q思考――シンプルな問いで本質をつかむ思考法』より引用しています)