下図で「5割を預貯金にとどめつつ、残り5割でオーソドックスな国際分散投資を行ったケース」と「9割を預貯金、1割で積極運用するケース」を比較してみた。国際分散投資で期待できるリターンは、藤川氏の指摘よりもあえて多めに見積もった5~10%。資産全体で見れば2.5~5%のリターンとなる。ただしリーマンショックのような事態が起きれば、資産を25%失うこともありうる。

 これに対し、1割の資金で行う積極運用では20~50%のハイリターンを追求するとする。レバレッジをきかした投資であればじつはさほど特異な目標値ではない。この場合でも資産全体で想定されるリターンは前述のケースと同様だ。一方、想定外の事態で積極運用資金すべてが吹き飛んだとしても、損は全体のマイナス10%にとどまる。資産の配分に気をつければ、リスクを取った運用も決してイチかバチかの冒険ではないのだ。

左が「国内外・株式債券にバランスよく投資るする分散投資」と「預貯金」を半々に持った場合、右が「預貯金を9割」「残りの1割で積極運用」をする例。レバレッジを5倍程度きかしつつ、左と同程度の運用効果を狙えるなら、積極運用部分の想定リターンは20~50%となり、左右のトータルでの想定利益は遜色なくなる。しかも右のモデルのほうが、リスクは限定的
 

 

従来の分散投資では不十分で、相関性の低い不動産や金などにも対象を広げるのが理想的。そして、資産のごく一部にとどめれば、リスクを取った積極運用は決して危険ではないことがわかった。では、具体的にどんな商品を用いて運用するのが効果的なのか? 各論を追求しよう。

分散効果が高い
金投資

 論より証拠で、まずは右下のグラフに注目していただきたい。これは金価格、日本株、米国株の推移を指数化して示したものだ。一目瞭然、金価格だけが明らかに異なる値動きをしていることがわかるだろう。特に2008年9月のリーマンショック後は日米ともに株価が暴落しているなかで、金価格の高騰ぶりが目立つ。藤川氏は次のように説明する。

※金価格:ロンドン午後仲値、日本株:TOPIX、米国株:ダウ工業株平均指数を基にステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ作成

 「リーマンショック以降、米国の金融緩和は長期化しており、ドルから逃げ出した資金が金へと向かっているのです。金は資産としてはもちろん、価値を保有するという役割も果たすだけに、ユニークで有意義な投資対象です」

 他の資産と値動きが大きく異なれば、それだけ分散効果は高くなる。では、金に投資するには、どのような手段を用いるのが最も有効なのか? この問いに、藤川氏はこう答える。

 「金の難点は、気軽に買いづらいこと。その点、『金ETF』は証券会社を通じて少額から自由に取引できます。保全性も重視するなら金現物の裏づけがある商品のほうが魅力でしょう」