最高値圏に突入しつつある円高の影響で、株価の低迷が顕著になっている。円は約15年ぶりに1ドル=80円台前半に突入し、それを嫌気した株式市場では日経平均株価が9000円台に落ち込んだ。株式市場はいつ低迷から脱出できるのか? 大和住銀投信投資顧問の門司総一郎・投資戦略部長は、過熱する市場の「二番底」不安に警鐘を鳴らし、円高・株安の行方を冷静に分析する。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)

「行き過ぎた“円高パニック”の本質を見極めよ!<br />悪材料が少ない日本株は年末にかけて回復基調に」<br />――門司総一郎・大和住銀投信投資顧問 投資戦略部長インタビュー 大和住銀投信投資顧問で投資戦略部長、チーフストラテジストを務める門司総一郎氏。行き過ぎた感のある市場の「円高不安」を冷静に見据え、株式市場は年末にかけて回復基調に乗ると予測する。

――円高・株安が止まらない。円は約15年ぶりに1ドル=80円台前半に突入し、それを嫌気した株式市場では日経平均株価が9000円台で低迷している。株式市場がこれほど混乱している背景には、どんな流れがあるのか?

 今年4~5月以降、株式市場は世界的な調整局面を迎えた。なかでも、日本株の調整が顕著になっている。

 その理由を改めて整理すると、きっかけは春先にギリシャをはじめとする欧州の財政不安が噴出したことだった。6月以降は、欧州危機の影響を被ると見なされた米国や中国を中心に、世界経済の「二番底」不安が広まった。

 特に不安が募ったのが、米国の経済指標が悪化したことだ。そのため、ドルが売られて逃避した資金が円に流れ込み、反動で株式が下落している。これが、直近の円高・株安のベースとなっている一連の流れだ。

――世界経済の「二番底」リスクにより、株式市場ではさらに調整が続くだろうか?

 当面は悪材料になり続ける可能性もあるが、そもそも市場関係者の「二番底」懸念は行き過ぎだと思う。

 実は、各国の主要エコノミストは、世界経済の行く先を悲観的には見ていない。『Consensus Economics』が発表しているデータによれば、エコノミストによる実質GDPの成長率予測は、平均すると世界全体で上方修正基調を持続している。