Z会の優位性を変えずに、デジタルの即時性を 

  「iPadスタイル」とは、Z会の強みである良問と添削の内容はそのままに、従来の紙ベースでの学習を、iPadを通して効果的・効率的に行えるようにしたシステムである。

 仕組みは簡単だ。例えば、高1・高2生向けコースでの学習の場合、会員は最初に「iPadスタイル」の学習アプリをダウンロード。「理解度チェック」で必要な学習を診断し、未習の単元や理解が不十分な単元があれば「映像授業」で知識を習得。「確認問題」をiPad上で行い、知識の定着を確認したら添削問題に進む。添削問題はiPad上に表示されるが、解答は事前に郵送されている「紙」の解答用紙に書き込んでいく。答案が完成したら、専用の撮影キットを使って答案を撮影、送信する。この答案が返却されるまでの日数は、従来の紙ベースのものが約9日後であるのに対して、iPadスタイルでは約3日後になっている。

「世の中には、学習アプリが数多くありますが、その多くは一問一答形式の単純なドリルで、大学入試のための本格的な学習はできません。『iPadスタイル』では、添削問題は紙ベースの通信添削と全く同じで、答案も入試と同様に実際に手を動かしてアウトプットすることにこだわっています。難関大に合格するには、手を動かして自分の言葉で表現する訓練が重要だからです」と三木主任は強調する。

 Z会の添削は、単なる正誤ではなく、間違いの原因を浮き彫りにして、考え方の根本から指導することに特徴がある。解答の組み立て方が論理的に示されるので、得点できる答案を作る力が身に付くという強みがあるのだ。「iPadスタイル」は、ICT機器の活用で、その強みを受け継いだまま、よりスムーズに学習できる。詰め込んだ知識だけではなく、思考力が問われる難関大入試にふさわしい「本質的な力」を養う。ひと言で言えば、Z会の優位性を変えずに、デジタルの即時性を取り入れたシステムなのだ。

 送信した答案のデータは、添削を受けて約3日後にiPadに返信される。会員は添削された答案をiPad上で確認し、解答解説を読むことで理解を深める。さらに個々の答案の成績に応じて、復習してほしい添削問題をストックする「復習リスト」のシステムも整えられている。

教室と職員室、自宅を結ぶ学校向け次世代型学習支援サービスも開始

 15年からスタートした「iPadスタイル」は、16年から対象学年が増え、中2・中3でも開講。中1から高3までの全学年に対応するようになった。また、小学生向けのアプリを新規開発したり、高校受験生向けのアプリを全面的にリニューアルしたりと、会員の年齢・属性に合わせて学習に取り組みやすいように設計している。現在、Z会の会員はこの「iPadスタイル」か、従来からの紙ベースの「テキストスタイル」を選ぶことができ、リニューアル後の高校受験生向けiPadスタイルにおいては、新規申し込み者の約6割が「iPadスタイル」を選択するという。

 さらに、Z会では、この「iPadスタイル」以外にも、ICTの活用を積極的に進めている。

 その一つが、教室と職員室、自宅を結ぶ学校向け次世代型学習支援サービス「StudyLinkZ」だ。全国の中高一貫校で多く利用されている英語教科書『NEW TREASURE』のデジタル教科書を今春リリース。多彩な音声機能や文法・語彙の反復学習、文法解説動画など、紙の教科書では実現が難しかった機能が満載され、効率よく学習を進められる内容になっている。また、e-learningによって生徒一人ひとりの理解定着をサポートするとともに、その結果は模試や学校成績、進路指導情報、面談履歴などと合わせて「生徒カルテ」として一元管理できるなど、校務支援の機能も充実している。すでに全国約70校の中高一貫校で採用されているという。

「既成の枠組みをどんどん超えて、一人ひとりの学びを未来につなげていけたら、という思いで開発に取り組んでいます」と三木主任。

 かつて「通信添削」という方法を、私教育に取り入れたZ会創業者。教育にイノベーションをという進取の気性は、老舗の看板の下で脈々と受け継がれている。