経営 X 人事

秘めた力を引き出す「脱・常識経営」<4>

吉永泰之・富士重工業 代表取締役社長

富士重工業は2017年の100周年を機に社名を「SUBARU」に変更する。「スバルブランドを磨く」「強い事業構造を創る」という2つの取り組みを、グローバルブランド「SUBARU」の下に結集させていくという。自動車業界の常識を覆す吉永流「脱・常識経営」最終回は、社名変更の狙い、これからのライバル、独自のブランド構築について聞いた。(コンサルティング編集部 松本裕樹)

スバルのこれからのライバルは
クルマの概念を変えるイノベーター

自動車業界の動向についてもお伺いしたいのですが、グローバル競争が高まる中、日産自動車が三菱自動車工業を傘下にするなど、「1000万台クラブ」に向けた合従連衡が続いています。吉永さんは自動車業界の将来地図をどのようにご覧になっていますか。また、その中での御社の立ち位置はどうなっていくとお考えですか。

富士重工業 代表取締役社長
吉永泰之
1954年東京都生まれ。1977年成蹊大学経済学部卒業後、富士重工業入社。主に国内営業および企画部門を担当する。2006年戦略本部長、2007年スバル国内営業本部長、2009年取締役兼専務執行役員。2011年6月に社長就任後は次々と改革を断行し、売上高、各利益ともに4期連続で過去最高を更新。温和な表情だが、飛び出す言葉は時に鋭く手厳しい。三面六臂(さんめんろっぴ)の阿修羅像の写真を常に身近に置く。

 業界全体としてはコモディティというか普通の移動手段としての車が大きなシェアを占めるでしょう。ここでは規模やコスト競争力の競争になります。(日産自動車社長の)カルロス・ゴーンさんがそちらを目指すのは当然の判断だと思います。

 一方、当社のように100万台規模で非常に個性的な車をつくる会社も生き残ることができると思っています。 

 個性的で魅力的な製品をつくり続けることは大変ですし、競争も激しいと思います。しかし、個性的なメーカーが存在するのは人類にとってプラスのはずですから、我々はその道で頑張っていこうと思っています。

 ただし、企業規模の大小を問わず、生き残っていくためには環境対応は避けては通れない条件です。しかし、ハイブリッドや燃料電池などの開発には巨額の研究開発費がかかるので、中規模以下のメーカーが1社で賄うことはできません。当社がトヨタ自動車と行っているような、大手と中堅以下メーカーとのアライアンスの動きは今後さらに高まってくるでしょう。

 環境対応に加え、今後、生産効率を向上するための部品のモジュール化や、車の性能を高めるためのエレクトロニクス化も進んでいくと思います。たとえば、電気自動車が普及した時、水平対向エンジンで培った知見や個性が活かせるのか。モジュール化でどれも似たような商品になるのではないか。また、自動運転が普及した時、運転の愉しさをどこまで製品に反映できるのか。つまり、自動車に求める機能やモノづくりのあり方が進化していく中で、それと逆行するように差別化の要素が薄れていくというか、個性的な製品がなかなか生み出しづらくなっていくのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 たとえば、水平対向エンジンというのは、おっしゃる通り、当社製品の特徴であり、非常に記号性があります。

 しかし、大事なのは、水平対向エンジンが顧客にどんな価値を提供しているかです。おそらくよほどの機械好きでなければ、エンジンの構造がどうかよりも、重心が低いことがもたらす走行性能を評価しているのだろうと思います。

 そう考えると、電気自動車になって水平対向エンジンを搭載しなくなっても、同じように低重心で走行性能の高い車をつくればいいわけです。

 それと安全性能というのもスバル車の大きな特徴です。先ほどお話しした新しいプラットフォームでは、走行性能に加えて安全性能も大きく進化しています。あえて強調したいのですが、新しいプラットフォームを導入した最大の目的は、モジュール化で多車種を簡単につくることやコスト削減などではありません。スバルらしい個性をさらに伸ばすための刷新だということです。もちろん、刷新するからにはコストを多少は下げる努力はしますが、それは主目的ではありません。ここは競合他社とは大きく異なる点だと思います。

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「トップ・マネジメントの教科書」人と組織を動かすリーダー論

組織メンバーの自発・自律的な自己変革によって会社をよくしたいと思うならば、アメとムチ、命令と統制(コマンドアンドコントロール)など時代遅れの経営慣行――心理学や社会学の実験が証明しているように、これらは逆効果である――を排し、21世紀にふさわしいマネジメントを発明すべきである。それは、経営の意志の問題にほかならない。

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