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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

日本企業は海外の後追いをやめない限り勝機はない

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第22回】 2016年6月30日
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海外の後追いは「ムーアの法則」に
戦いを挑むことになる

 では、いったい日本企業は何をしていたのかというと、常に海外の後追いをしていた、という印象があります。

 これまでも今も、日本の企業はすでに世にある概念やサービスの「日本版」を作ることに一生懸命。例えば、クラウドでAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)が浸透してくると、「ならばもっと優れた日本版AWSを作ろう」という発想になりがちです。しかし、すでに製品化された分野に力を注いでも、いずれ価格はどんどん安くなり、消耗戦を強いられることになります。ワンテンポ遅れたモグラたたきに勝ち目はありません。

 それは、この連載でも以前に書いた「ムーアの法則」からも明らかです。ムーアの法則とは「半導体の性能は18~24ヵ月で2倍になり、価格は半分になる」というもの。つまり、技術力がいかに優れていても、製品単体の値段がどんどん安くなる流れは止められないため、それだけではいずれ厳しい状況に追い込まれてしまう可能性が高いというわけです。

 もし、あなたがエンジニアで素晴らしい技術を生み出したとしても、それを越えるものが次々と生まれ、価値は下がってしまうのです。どんな天才でも「ムーアの法則」には逆らえないでしょう。

「今からAIビジネス」なんて遅すぎる

 現状でいえば、例えばクラウドがあり、それを活用したビッグデータが生まれ、そのビッグデータを活用したAI(人工知能)がさまざまな分野で注目されています。だからといって、今からAIビジネスに乗り出していこう、なんていうのは遅すぎる。

 そうではなく、「AIは今後もっと普及するだろうから、それを前提としたビジネスを創り出そう」という発想が必要。10年先の世の中は、手術も介護も育児も教育もロボットが主役になっているかもしれない。つまり、AIが普及した世の中を想像して、どこにビジネスチャンスがあるのかを考えるクリエイティビティが求められるんですね。

 他社と同じステップを踏んでいたら勝てるわけがありません。スキップして先を行くことが必要なのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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