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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

日本企業は海外の後追いをやめない限り勝機はない

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第22回】 2016年6月30日
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“コーンシードを
全部食べてはいけない”

 とはいえ、既存の大企業が新規事業を急成長させようとしても無理があるでしょう。例えば、売上高1兆円の会社が1年で10%(=1000億円)売り上げを伸ばさないといけない場合、社内ベンチャーではとても間に合わないからです。当然、人材も時間も限られるため、既存事業の拡大で売り上げを伸ばそうとします。これは日本企業だけでなく、米国の企業も同じです。

 しかし、中長期戦略を立てて、高い成長が見込める分野を取り込んでいかなければ将来立ち行かなくなります。よく考えてみてください、フェイスブックもウーバーも10年前にはなかった会社だということを。それがここまで成長したのはなぜかということを。

 米国には「コーンシードを全部食べてはいけない」ということわざがあります。トウモロコシの種は来年春に植えるために一部をとっておかなくてはいけないという意味です。この教訓が示すように、将来に備えて先行投資しなければ、イノベーションは決して生まれないのです。

「デジタルネイティブ」に世代交代する
タイミングがチャンス

 ここまで、日本企業にがんばってほしいという思いを込め、少々批判めいた話をしてきましたが、最後にもう1つだけ付け加えておきます。それは、日本企業にはまだ“デジタルネイティブ”ではない経営陣が多いというハンディがあることです。

 いまトップやリーダーになっている世代の多くは、子供の頃からコンピュータに親しんでいないため、ITのよさを実感として理解していないと思います。その結果、ITへの関心も薄い人が多い。そんな人が上に立っているのですから、ICT活用が遅れるのは当然ですね。

 このICT導入の遅れは、日本の労働生産性が他の先進国に比べて極めて低いことの原因の1つにもなっているといえるでしょう。以前も紹介しましたが、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、各国の労働生産性で、先進国中、日本は最下位です。日本生産性本部による「日本の生産性の動向2015年版」を見ても、日本の労働生産性(就業者1人当たり名目付加価値)はOECD加盟34ヵ国中21位、主要先進7ヵ国では最も低い水準となっています。

 ただ、ノン・デジタルネイティブ世代の経営陣も現役を退く時期がそろそろ近づいています。デジタルネイティブに世代交代するタイミングは、日本企業が一皮むける絶好のチャンス。ICTの活用も加速するかもしれません。そのときはぜひ、イノベーションを生み出すための中長期投資にも力を注いでほしいですね。

(構成/河合起季)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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