プロ経営者の「しくじり」

「プロ経営者」という言葉をさまざまな媒体で目にするようになった。それは、二人の大物プロ経営者が相次いで退任したからだ。一人は、LIXILの藤森義明社長兼CEO、もう一人はベネッセホールディングスの原田泳幸会長兼社長だ。

 藤森氏は、日商岩井(現双日)からゼネラル・エレクトリック(GE)に入社し、46歳の若さで上席副社長になり、アジア人としてはじめて同社の経営陣の一員となった。5社が合併してできたLIXIL。その一社トステムの創業家二代目潮田洋一郎会長兼CEOから経営を託された。

 しかし、買収した独グローエ傘下の中国企業ジョウユウに巨額の簿外債務が発覚し、結果660億円の損害を被った。記者会見でジョウユウの不正会計問題について、進退とは「全く関係ない」と断言したが、この失敗の責任を取らされた、あるいは、M&Aの手腕に疑問符が呈せられたとみるのが妥当であろう。

 一方、ベネッセホールディングスの原田氏は、日本NCR、仏シュルンベルジュを経て、アップル・コンピュータ・ジャパンに入社し、マーケティング部長を振り出しに米国本社勤務などを経て、日本法人の社長となる。次いで、日本マクドナルド会長兼社長を経て、創業家二代目の福武總一郎会長兼社長からベネッセホールティングスの経営を託された。

 ところが、周知のように就任間もなく顧客情報流出事件が起こり、さまざまな形で打ち手を講じたが功を奏せず、顧客の流出、業績悪化は止まらず、「三期連続減収減益が明らかになったことの責任を取って」辞任を発表したという経緯だ。

 原田氏は、創業家からの信任を失ったのではなく、あくまでトップとしてのケジメで自ら辞任を決断したことを強調しているが、原田改革路線に対する社内の不協和音に対しての疑問を持たれていたかもしれない。

 これらを報じた記事を通じて、だからプロ経営者はダメなんだという印象を持った人も多いことだろう。

 このような辞任が、プロ経営者そのものへの否定に繋がるのではないかと懸念するが、それでも日本の企業経営にプロ経営者が必要だと私は考えるのだ。