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イチローとピート・ローズ、チチローをめぐる「残念」な話

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第166回】 2016年7月2日
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 先月16日、都内では号外が配られた。マイアミ・マーリンズのイチロー選手が日米通算4257本目のヒットを放ち、ピート・ローズ氏が持つメジャー記録を抜いたからである。

 この4257本という数字がどのくらいの意味を持つかというと――、一年間に200本のヒットを打ってそれを21年間続ければ4200本だ。が、それがどれだけ大変なものかというと、日本のプロ野球でシーズン200本安打に到達したのは過去にわずか七人しかいないくらい困難な記録なのだ(オリックス時代のイチローが一回、ヤクルト時代の青木宣親選手が二回、他四人)。

 メジャーリーグとなると、試合数が違うものの、1893年(日本では明治26年)のエド・デラハンティーから数えて述べ103人がシーズン200安打を放っているが、その中でもイチローは“10年連続”200本安打という化け物じみた記録を作っている。とりわけ2004年に放った262安打はメジャー年間最多安打記録にもなった。また、シーズン200本安打はピート・ローズも10回記録しているが、10年連続ではない。

 記録上、イチローは世界でもっともヒットを打った選手(しかも現役)になるのだが、彼の偉大なる道のりは“日米通算”であるが故に、メジャー記録として認定されないというサイドストーリーを持ちあわせてもいる。スポーツ紙のデスクが言う。

 「マーリンズの地元マイアミで12日(ピート・ローズの記録にあと4本と迫った日)、『サンセンチネル』というメディアに“イチローにとってローズのヒットの数を追うことは重要ではないが、日本では大騒ぎ”という見出しの記事がありました。

 地元紙ですら好意的に紹介していないんですよ。多少は話題にはするけど記録としては認めない、というスタンスですね。それも当然のことで、MLBもNPBも日米通算の数字を記録として認めていません。認めているのは日本の名球会ぐらいですからね(笑)」

 ピート・ローズも、早々とイチローの記録を“認めない”と発言していた。

 「おれをキングからクイーンにしようとしているのか? 日本の野球とメジャーは同じレベルではない。彼はおれの記録を抜いていない」

 ピート・ローズと言えば、1989年、レッズの監督を務めていた際、野球賭博への関与が表沙汰になって“永久追放処分”を課せられた人物だ。昨年、三度目の処分解除を要請したが却下されている。そして、監督時代のみならず、現役時代にも野球賭博に関与していたことが明らかになった。

 そのために、歴代最多安打記録を持ちながら、ピート・ローズはまだ野球殿堂入りが果たされていないのだ。彼は、汚れた英雄だった。だからこそ、こんな台詞も汚れた英雄には相応しいのかもしれない。

 「殿堂入りする資格のあるイチローから何も取る気はないが、日本では次は高校時代の安打まで数えるんじゃないか」

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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