分析力向上に欠かせない
経営者のリーダーシップ

 では、分析力を高めるために企業は何をすべきだろうか。今日ではさまざまな分析ツールが登場しており、その機能や使い勝手も向上している。また、業務システムから抽出・加工したデータを格納するDWH(データウエアハウス)の構築技術も進化している。消費者の声や在庫の状況、経営状況などを多様な軸で可視化し、分析するための条件は整ってきた。

 ただし、このようなツールや技術を使いこなすためには、経営者の意識や企業としての仕組みが求められる。横溝氏はこう指摘する。

「分析力はあくまでも手段。それを武器として競争力を高めるためには、経営者のリーダーシップはもちろん、業務のなかに分析を埋め込むための仕組みづくりが重要です。それは一種の全社運動です。単に分析の担当部門を置いただけで、運動を推進することはできません」

社内の意識をいかに高め、
分析力を業務に埋め込むか

 業務のなかに分析力を埋め込む。それは、C(チェック)をいかにA(アクション)につなげるかということでもある。いくら立派な分析報告を作成しても、それが次の意思決定に生かされなければ意味がない。

「分析力で勝つ」という意識を高め、それを全社運動に広げるために、横溝氏が提案するのは「小さな成功体験」である。

「いきなり難しいことに挑戦しても、うまくいく可能性は低いでしょう。分析に限らずあらゆる施策に言えることですが、まずは容易なテーマを見つけて小さな成功を生み出し、それを社内で共有することです。また、何のために分析するのかという目的意識も欠かせません。社内のリソースだけでは推進力が足りないのであれば、専門家の力を借りればいいでしょう」

 ただし、横溝氏はこう付け加える。

「専門家任せではなく、彼らの得意分野を把握したうえで協力関係を構築する。主体的に判断し行動するのは自分たちだ、という意識を忘れてはなりません。最後に問われるのは、自分たちの頭でどれだけ考えたかということです」

 いくら分析の技術が進化しても、「自分の頭で考えること」の重要性は変わらない。結局のところ、競争優位をつくり出すのは人間の思考なのである。

※「週刊ダイヤモンド」9月25日号も併せてご参照ください。
※この特集の情報は2010年9月21日現在のものです。