ツール・ド・フランスで上位を争う日本人選手がいない理由

 7月2日、「ツール・ド・フランス2016」が世界遺産であるモン・サン・ミシェルをスタートした。24日までの23日間、総距離3519キロの長く厳しい戦いが行われる。

 ご存じの通り、ツール・ド・フランスは世界最大の自転車ロードレースだ。1903年に始まり、今回で103回を数える。沿道でレースを見る観客は約1200万人。世界190ヵ国以上で放送され、視聴者数はのべ35億人に達するそうだ。注目度ではサッカーW杯やオリンピックに次ぎ、F1と同格ともいわれるビッグイベントである。日本では有料チャンネルのJ SPORTSが連日生中継し、NHK・BS1が週末にハイライトを放送する。

個人成績も発表されるが基本は団体競技
役割分担もあるツール・ド・フランス

 もっとも日本では今行われているプロテニスのウインブルドン選手権やメジャーリーグに比べ注目度は今ひとつ。今、ツール・ド・フランスが行われていることを知らない人も多いのではないだろうか。

 ウインブルドンでは4日現在、錦織圭と土居美咲が勝ち残っているし、MLBではイチローが3000本安打に近づいていることが大きい。だが、ツール・ド・フランスにも日本人選手は出場している。リオ五輪の代表でもある新城幸也(31)だ。ツール・ド・フランスの出場は今回で6度目。過去5回の総合成績は09年=129位、10年=112位、12年=84位、13年=99位、14年=65位でいずれも完走。今回はイタリアの「ランプレ・メリダ」というチームの一員として出場している。

 ツール・ド・フランスでは個人成績も発表されるが、基本的には9人編成によるチーム戦だ。どのチームもエースを勝たせるために他の選手はサポートする走りをする。出場するのは世界のトップに位置する22チーム。掛ける9人で198人が出場。新城は残念ながらエースではなく、サポートする役目のため前記のような順位になってしまうのだが、トップチームの一員として契約を勝ち取るだけでも、とんでもなくすごいことなのだ。ただ、やはりチームのエース級になって上位に食い込まなければ日本では注目されないのだろう。

 日本はあらゆる競技が盛んだし、有望選手が英才教育を受けることが珍しくなくなった。その積み重ねの結果、今、オリンピックはもとよりMLB、サッカーやラグビーのW杯など世界のトップで通用する選手が現れるようになった。