外国人の常識・文化を知るには
その国の刑法を読め

 では、コミュニケーションを円滑にするために、具体的に何をすればいいのでしょうか。相手が外国人の場合は、言語の習得も必要ですが、それ以上に常識と文化の違いを知ることが大切です。

 例えば、国ごとの常識の違いというのは、刑法を見ると顕著です。国によって「何をすると罰せられるか」の軽重が違うので、当然、その環境で育った人の罪悪感や、やっていいこと、悪いことの判断基準も違ってきます。日本でいう民法を含め刑法の特徴から、やってはいけないことの重みを理解しやすくなるでしょう。

 また、私が吉野家の海外事業に携わっていたときに感じたのですが、民族によって「時間軸の感覚の違い」というのもあります。特にアジアでフランチャイズ展開を進めていたとき、中華系の人たちの経済観念として、短期志向が強いことに驚きました。彼らは利益が出ると直ちに株主に分配して、未来に残しておこうという概念がありません。ほとんど100%配当で、日本人のように配当性向を低くして内部留保に回すという発想が薄いのです。

 どちらが優れているかという是非の問題ではなく、相手を理解するために、常識・文化の違いがあるということをまず踏まえなくてはいけません。ですから地域・国ごとの社会規範や文化・風習の違いを専門家に聞いて学習するのは、仕事で外国人とコミュニケーションを取るときには必須のことと思います。

 自分と相手の違いを知ったうえで、自社の経営戦略や企業文化を伝えていく。また、フランチャイズ展開であれば、本部が持つノウハウをフランチャイジー(加盟店)が活用するという一定の主従関係があるので、そのことの説明を尽くす。あくまで“違いを踏まえた”コミュニケーションの努力をするのです。

 外国人を相手にする場合、常識や文化が近しい日本人同士よりも相互理解が大変なことは確かです。ただ、私が海外でマネジメントをしていたとき、違いがあるがゆえに、どうすれば伝わるかを一生懸命考え、ある意味では日本人の部下に接する以上に熱意をもって接しました。その結果、真意をわかってもらい、信頼関係を築けたということが多々ありました。

 国を問わず、「自分のことを一生懸命考えてくれている。育ててくれようとしている」ということが伝われば、ほとんどの場合、相手はそれに応えようとしてくれます。外国人との間で信頼関係を築くのには時間も手間もかかりますが、最終的に「こいつは信用できる」という感覚は、国籍が違えども変わらないものだと思います。

 むしろ危険なのは、「日本人なら一を聞いて十を知り、配慮もあるが、外国人は自分の利益追求ばかりで真剣に会社のことを考えていない」などと、浅はかな先入観で決めつけることです。そういう先入観をもって相手と接することは、はなからコミュニケーションを放棄したのと同じで、100%うまくいきません。「アメリカ人や中国人には、日本的経営の価値など、どうせ理解できないだろう」という浅薄な先入観は、ほとんどの場合間違っていると自覚するべきです。