研究力を戦略的に 成長させるダイバーシティ

 イノベーションを起こせる大学であるための条件として、森氏は三つのポイントを挙げる。一つは研究の「組織力」があること。今は学問領域をまたいだ学際的なチーム研究が主流であり、従来の“たこつぼ型”研究ではイノベーションは生まれにくい。個人の研究力だけに依存せず、組織として研究を企画・支援する力が大学にあれば、優秀な人材の流出も防ぐことができる。

 二つ目は学内の「国際化」を進めること。世界大学ランキングの重要な指標として国際化という指標があるが、これは外国人教員と留学生の比率が高いことが必須。外国人教員・留学生にとって魅力的な研究環境を整えれば、グローバルに優秀な人材を確保でき、彼らが帰国した後も国際的な研究ネットワークが構築できるという好循環を生み出す。

 三つ目は「教員」の働き方を変えること。日本は産学間の人材流動、特に大学から企業への人の流れが少ない。例えば、大学と企業の両者が研究者を雇用するという“クロスアポイントメント制度”の導入が人材流動性の低さを補完できれば研究の活性化につながるはずだという。

 「いずれにしても、キーワードはダイバーシティ(多様性)。大学が学問分野・国境・産学の壁を超えた多様性を生かしながら研究力を戦略的に成長させることで、イノベーションを起こせる環境はさらに広がるはず」と森氏は指摘する。産業の発展、ひいては国力の発展に、理工系の大学が果たす役割は、ますます大きくなっている。