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子育てママを追い詰める現実、母乳バンク創設医師が語る

昭和大学江東豊洲病院 小児内科教授・水野克己氏インタビュー

西川留美
2016年7月13日
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母乳哺育のエキスパートで、母乳が出ない母親に代わって別の女性の母乳を提供する日本初の「母乳バンク」を生んだ小児科医が、今度は悩める子育てママたちの支援に乗り出そうとしている。日本の「母乳バンク」の創設者である昭和大学江東豊洲病院の水野克己教授に、自身の新たなプロジェクトと育児中の母親たちの危機的な状況について聞いた。(取材・文/フリーライター 西川留美)

――日本の母親たちの現状についてお尋ねします。

みずの・かつみ
1987年、昭和大学医学部卒、93 ~95年、米マイアミ大学で上気道の生理を研究。95~99年、葛飾赤十字病院小児科副部長、99~2005年、千葉県こども病院新生児科医長、05年より昭和大学小児科に勤務。母乳哺育について長く研究を続ける。2013年10月、欧米では広く普及している「母乳バンク」を昭和大学小児科研究室内に日本で初めて設立。

 この少子化の時代に、子どもを産み育てるお母さんたちが苦しんでいます。これは明らかにおかしい状況だと感じています。

 20年後、30年後の社会を支えるのは、子どもたちです。まさに「子は宝」であって、われわれの世代が安心して日本で暮らせるかどうかも、これから生まれる子どもたちにかかっている。将来はわれわれが養ってもらう側ですよ。なのに、子どもやお母さんたちが、まったく「宝物」扱いされていないのというのが現状です。

 電車の中でも、赤ちゃんを抱っこしたお母さんを差し置いて若者が座席に座っていたりするでしょう。産婦人科や小児科だって、大きなお腹や荷物を抱えたお母さんのために、医者が自分でドアを開けて迎え入れるというのがスジです。椅子にドカンと座って偉そうに呼び出すもんじゃない。宝物には宝物らしく接するべきです。

──医療の現場でも、おかしいと感じることが多いということですか。

 小児科医という立場で、日々たくさんの母親たちと接していますが、子育てをする環境は非常に苦しい。出産までは産婦人科がいますが、産んでしまうと彼女たちを定期的に見ている相手はいなくなる。夫は仕事で忙しい世代で、お母さんのいわゆる“産後クライシス”にも気づかないことも多い。私のような小児科医は、子どもの病気の診察に来たお母さんと話をしているうち、お母さん自身の悩みの相談を受けることも大変多いのです。相談する先もないお母さんは、追い詰められた環境にいます。

 なにより、診察に来て、泣いてしまうお母さんがたくさんいるんです。日本の母親を守るためには、何かしなくてはならない。彼女たちを開放された空間のもとで応援したいと考え、プロジェクトを始動しました。

――具体的には何をしようとしているのですか。

 2015年に、“子育て中の母親が笑顔で我が子と向き合える社会の実現”を目的として、同院医局内に、 NPO法人 江東豊洲 子育て&母乳育児を支援する会(以下、KOTOCLO)を設立しました。今後、このプロジェクトでは、具体的に言うと、3階建ての子育て中の母親を支援する施設を作ろうと考えています。

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