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データが生きるかどうかは経営トップ次第
中堅企業を飛躍させるIT活用術(2)

上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]
2010年9月21日
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 中堅企業が選択と集中によって競争を勝ち抜くために、データ分析が必要なことを前回述べた。その際に最も重要な要素は何か。売り上げ、利益、経費など見るべき項目は山ほどある。しかし、じつはどの項目をどう見るかという技術的なことよりも、データ分析を問題解決に積極的に活用する企業風土の形成がポイントとなる。それには経営トップが率先してデータ分析を奨励したり、自らも活用に取り組む行動が重要となる。それによって、データを活用しようという機運が一気に高まるからだ。

 ある製薬メーカーの例を挙げよう。この会社は、かつて薬店向けのマーケットで高いシェアを誇ったが、その原動力となったのは、社長が率先する現場の“データ活用”だった。

 まだITのない時代だったが、社長は全国の営業員の日報を毎日夜間便で本社に送らせ、翌日午前中にはすべてに目を通して、コメントを返していたという。社長が翌日に直接見るので、営業現場のモチベーションが向上し、各営業所の中間管理職は素早く真剣にデータを見るようになった。何より「錠剤の形はこれでいいのか」「効能の書き方に過不足はないか」といった議論が、営業日報に記述された顧客の声に基づいて交わされるようになり、同社の業績は大きく飛躍したのである。

 もちろん、そのための社長の労力は大変なものがあった。しかし現在は、BIツールなどITが活用できる。データを統合して蓄積しておけば、ツールを使って、合計から中計、中計から小計、そして生データへと掘り下げることが簡単にできる。BIツールは、エクセルなどと違って、こうしたドリルダウンやドリルアップが自在にできることが大きなメリットだ。

 「ダイヤモンド・オンライン」が8月25日~9月2日に行ったBIツールに関するアンケート調査によると、BIツールの利用状況では「利用しているが、十分活用できていない」が55.9%にも上った。その理由としては「BIツールを活用するための分析のノウハウや能力を持った人材がいない」がトップだった。だが、最新のBIツールは使い勝手が急速に進化しており、実際には、使いこなすのに専門家を必要とすることはそれほどない。たとえば業績が悪化している問題箇所を分析して原因を発見する、予算と実績の差の詳細な確認を行うなど、日常業務に直結するところから始めればよいだろう。それによってデータを活用する効果が明確となり、活用ノウハウも徐々に高度化していく。

 冒頭で経営トップの行動が重要と述べた。経営トップが自ら毎日データを見るようになれば、社員の意識が自然に変わり、データを活用したビジネススタイルができあがってくる。だが、トップがデータを見て細かな指示を直接ラインに出すことまでやると、指揮命令系統が混乱したり、現場が萎縮してしまいかねない。そして本音の現場情報が上がってこなくなる危険性が生じる。トップはデータ分析を行ってもあくまで質問を投げかける姿勢にとどめておくべきだろう。

 データから課題を抽出して、原因を追求し、対策を実行するという、事実に基づくPDCAサイクルが確立されることで、中堅企業の競争力は大幅に強化される。そのためにBIツールという便利な道具を役立ててほしい。

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上村孝樹 [ジャーナリスト/コンサルタント]

「日経情報ストラテジー」「日経アドバンテージ」(ともに日経BP社)などの編集長を経て2005年に独立してフリーに。経済産業省IT経営応援隊「IT経営百選」選考委員会委員長などを歴任。事業創造大学院大学の客員教授も務める。


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