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ポスト「爆買い」市場確保へ、相次ぐ訪日客向け新サービス

ロイター
2016年7月6日
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中国人観光客らの「爆買い」終息で、小売り・サービス業界が訪日需要の定着や拡大をめざす新たな取り組みを始めている。写真は都内で2014年5月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 6日 ロイター] - 中国人観光客らの「爆買い」終息で、小売り・サービス業界が訪日需要の定着や拡大をめざす新たな取り組みを始めている。日本を訪れる人々の関心は「モノ」から「体験」に移っており、企業側の外国人シフトは若者や富裕層を狙った結婚式やリムジンサービスなどにも広がってきた。英国の欧州連合(EU)離脱問題による円高など逆風が吹く中、百貨店やドラッグストアに変わるインバウンド需要の受け皿作りが動き出している。

沖縄で急成長、訪日結婚カップル

 日本の若者に人気がある沖縄でのリゾート婚。目立って増えているのが、台湾や香港など海外からの申し込みだ。沖縄県観光振興課の調べによると、2015年に沖縄で結婚式をあげた外国人カップルは過去最多の1458組にのぼった。同県のプロモーション強化やチャペルの整備などが実を結び、わずか5年で約7倍に拡大している。

 沖縄の売り物である青い海、白い砂浜。映画のワンシーンのような美しい風景のなかでのウェディングが、結婚写真にこだわる文化のある台湾や香港などの若い人たちのニーズをとらえた。

 このビジネスチャンスに乗り遅れまいと、結婚式場運営のエスクリは2015年10月、沖縄に結婚式場をオープンし、アジア人向けのサービスを開始した。写真の仕上がりや料理の味付け、メイクなどで日本人とは異なるニーズに対応した結果、この結婚式場の受注の約2割がアジアのカップルとなっている。

 訪日客にとって、一番人気の体験である日本食。大阪梅田にある寿司店は、日本人に人気があるという口コミが外国人向け観光サイトなどに広がり、今では15人ほどが座れるカウンターに訪日客が座ることも珍しくない。カウンターの中で握る寿司職人はほとんど英語を話さないものの、写真入りの外国語メニューと携帯アプリの翻訳機能で何とかこなしている状況だ。

 日本ユニシスは「言葉が壁」と感じる飲食店へのサポートにビジネスチャンスを期待する。食材の説明や料理の解説、スムーズな注文などを含めた「食の体験」を支援するために、接客ナビゲーションシステムの実証実験を5店舗で行っている。「日本の食文化などへの理解も深まり、客単価も向上している」(担当者)との評価も得ており、8月上旬以降のリリースを予定している。

富裕層消費、2泊3日で200万円

 「富裕層の旅行者数は全体の3%に満たないが、旅行消費額は25%を占める」――。ヒト・コミュニケーションズの安井豊明社長は、訪日客の富裕層をターゲットにしたサービスに自信を示す。

 同社は新会社「ジャパンリムジンサービス」を設立。リムジンに通訳案内士や添乗員が同乗し、旅行者のニーズに応じた体験ができるよう、オーダーメードの旅行を提供する。例えば、富士山を見て、温泉に入り、雪も体験。さらには、子供はレジャーランド、親は歌舞伎鑑賞と、別々のコンシェルジュが案内する――。こうしたサービスを全て盛り込んで試算した価格は、2泊3日で200万円。

 サービスの発表以降、すでに見積もりの依頼も出始めており、「7月の早い時期に実際のサービスを提供できる。利用者が増えてくれば、口コミでの広がりも期待できる」(社長室)と話している。当初15台のリムジンでサービスを開始。2年以内に北海道と関西にも拠点を設け、2020年までにはリムジンを80台に増やす計画だ。

 日本政府観光局(JNTO)の松山良一理事長も「インバウンド消費においては、富裕層の取り組みが課題」と指摘する。海外では、1泊500万円や600万円するホテルがあるものの、日本には、こうした富裕層向けのインフラは揃っていない。これが、欧米からの旅行者が思うように増えない一要因と指摘する声もある。

 観光庁は16年度の訪日プロモーション方針で「まだ十分に取り込めていない欧米豪からの訪日需要を確実に取り込む」ことを掲げたほか、「富裕層をターゲットとして、旅行先としての日本のブランドイメージを確立するためのプロモーションを実施する」とした。欧米からの観光客は長期滞在が多く、近隣のアジア諸国からの旅行客に比べて、旅行消費額も膨らむことが期待される。訪日客の幅を広げ、2020年の訪日客を15年比倍増の4000万人に拡大。旅行消費額は同2.2倍の8兆円と、訪日客数の伸びを上回る目標を掲げている。

爆買い終了は「普通の状況」

 5月の百貨店免税売上高は、3年3カ月ぶりにマイナスに転じた4月に続き、2カ月連続でのマイナスとなった。大手4社が発表した6月の速報値でも、免税売上高は減少している。日本百貨店協会では、しばらくはこうした傾向が続くとの見方を示している。しかし「爆買い」の一巡は「普通の状況」(三越伊勢丹ホールディングスの大西洋社長)と、冷静に受け止める声は多い。

 為替市場では急速に円高が進み、インバウンド消費を一段と冷え込ませるのではないかとの懸念が強まっている。為替円高が訪日客数にも影響を与えるかどうかは注視が必要だが、富裕層は為替動向など外部環境に左右されにくく、インバウンド消費の定着には欠かせない存在になるとの見方も聞かれる。

(清水律子 志田義寧 編集:北松克朗)

 

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