セーフティネットであらゆる者が自信を持ち自立できるようにせよ【絶版】
ダイヤモンド社刊
2548円(税込)

「社会の大転換が進行中である。その結果、いたるところで社会的なミスマッチが生じている」(『未来への決断』)

 社会的なミスマッチばかりではない。経済的なミスマッチも生じている。両者は連動している。

 なにかの巡り合わせで、そもそもの最初から、時代が要求する能力を身につけられなかった人たちがいる。あるいは、能力と責任感を持ちながら、多額のローンを抱えてリストラされ、生活の基盤を危うくされている人たちもいる。

 今日のような成長と転換の時代には、一人ひとりの人間が危険な事態に陥り、社会そのものが危険な状況を迎える怖れがある。それだけに、セーフティネットが必要である。セーフティネットは多額の資金を必要としない。

 ドラッカーは、必要なのは人びとが自信を持って自立できるようにすることだ、という。使うべき用語は、「福祉」ではなく、「自立」と「配慮」である。

 今日、多くの人たちがよい生活を送るようになったという事実が、機会に恵まれずに取り残される人たちを浮き彫りにしている。

 しかし、あらゆる者が自信を持ち、自らを発展させる力を高めることこそ、あらゆる者の利益にかなうのである。これは、かつてのような右と左のイズムの問題ではない。それは単に、マネジメントとイノベーションの問題である。

「苦境にある人たちに見切りをつけることが間違いなのは、必要なものが何であるかを教える成功例が既に沢山あるからである」(『未来への決断』)