経営×ソーシャル
事例でみる 企業×ソーシャル
【第4回】 2016年7月20日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

NEWクレラップしか買わない!熱狂的ファンを育てたクレハの戦略

「QON DAY2016」に登壇する、クレハ 執行役員 管理本部長・山田文彦さん

6月23日、インターネット上の消費者コミュニティについての大規模なセミナーが開催された。主催者は同日に「株式会社エイベック研究所」から社名変更をはたした「クオン株式会社」。当日会場には754名の参加者が集まり、各界の有識者・企業のキーパーソンから、将来のマーケティングに活かせる研究結果や最新のマーケティング事例が紹介され、大いに盛り上がった。

今回はそのなかから、「NEWクレラップ」でおなじみの株式会社クレハ執行役員管理本部長 山田文彦氏のセッションをお届けする。競合との勢力争いが続く「NEWクレラップ」は、価格競争に走ることなく、いかにロイヤルユーザーの拡大を行ってきたのだろうか。

競合からシェアを奪うより、
「絶対にNEWクレラップ」というファンを増やす

山田文彦(やまだ・ふみひこ)さん
株式会社クレハ 執行役員 管理本部長。1984年呉羽化学工業株式会社(現 株式会社クレハ)入社。工場の人事部門を経験した後、営業部門へ。B to B形態の化学薬品の営業に加え、NEWクレラップを始めとする家庭用品の事業部門においてB to C形態の営業を経験。家庭用品事業部長時代に「クレラップ コミュニティ」をクオン株式会社とともに立ち上げた。

 本日は、NEWクレラップという食品用ラップ製品についてのコミュニティを立ち上げ、どう運用してきて、どのようなプラスがあったかというお話をいたします。

 株式会社クレハはもともと、医薬品、農薬、炭素繊維、エンジニアリングプラスチック、化学薬品などの製造販売をしている会社で、大部分がBtoBの事業です。そのなかで、ほぼNEWクレラップだけがBtoC。私自身は、化学薬品の営業、人事部という経歴を経てクレラップの営業担当になりました。BtoCのマーケティングについては、いわば素人でしたので、業界特有の商談テクニックや販促提案の引き出しがなく、NEWクレラップユーザーと正面から向き合って考えるしかありませんでした。そのことが、コミュニティ立ち上げにつながったと、今は考えています。

 そもそもNEWクレラップの国内シェアはどれくらいか。某社のラップと合わせると、国内市場の8割を超えるシェアを持っていますが、NEWクレラップはそのうちの半分弱くらいを占めています。過去、当社のセールスはシェアナンバーワンをとろうと、あの手この手で努力してきました。例えば、小売チェーンに売り場提案、企画提案をするなどです。でも、結果として10年以上この勢力図は変わらなかった。売り場獲得競争は、価格の引き下げばかりを引き起こしがちでした。

 一方で当社は、商品改良にもずっと力を入れてきました。ラップを切れやすくする、くっつかないようにするなど、さまざまな工夫を重ねてきています。こうした改良を毎年春に行っていることから、私たちはパッケージに“NEW”クレラップと入れています。いつでもNEW、いつまでもNEWという想いを込めています。しかし、この品質・使い勝手の改良がそのまま市場シェア獲得につながっているのかというと、必ずしもそうではありませんでした。

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武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


事例でみる 企業×ソーシャル

ソーシャルメディアを上手く活用して、お客さまの声を聞きたい、自社のファンを増やしたい。そうしたニーズを持つ企業は少なくない。これまでエイベック研究所のソリューションを通して、自社や自社ブランドのファンづくりに成功してきた企業の事例を通して、これからの時代のコミュニティづくりの方法を探る。

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