火を見るよりも明らかな
住宅の供給過剰

井端純一 オウチーノ代表取締役社長 兼 CEO
井端純一
いばた・じゅんいち/同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、オウチーノを設立。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)、『30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』『10年後に絶対後悔しない中古一戸建ての選び方』(河出書房新社)など。

 総務省の最新データによると、「空き家」が820万戸に達した。国の住宅政策の無策ぶりが露呈した結果といえるだろう。

 日本では戦後の住宅不足を解消するため、「質より量」の政策で住宅が大量供給された。同じ敗戦国のドイツでも同様だったが、ある時期から新築の供給数を抑制し、良質な中古住宅の再利用に舵を切った。その結果、今は総世帯数と総住宅数がほぼ同数となっている。住宅が1世帯に1戸必要であることを考えれば、これが正常な状態といえる。

 ところが日本では総世帯数を総住宅数が上回り、その差が「空き家」となっている。国は口では「中古住宅の活用重視」などと言いながら、効果的かつ具体的な策を講じてこなかった。

 それどころか、小泉政権の規制緩和で容積率が緩和され、800戸、1000戸という大規模超高層マンションが湾岸を中心に次々に建てられた。今はアベノミクスによるマイナス金利導入や相続税改正で賃貸住宅の着工数が増えている。東京23区の空き室率は30%超と過去最悪。千葉、神奈川も同様。この10年間、毎年6.2万戸ずつ空き室が増えていたにもかかわらず、だ。そして何より、日本の総人口は2008年をピークに、長期の人口減少過程に入っている。住宅の供給過剰は火を見るよりも明らかだろう。