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ソーシャル グローバルトレンド
【第4回】 2016年7月26日
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武邑光裕 [クオン株式会社 ベルリン支局長]

ネットビジネスの中心が、シリコンバレーからベルリンへ移り始めた理由

<「QON DAY 2016」講演より>

「QON DAY2016」に登壇する筆者

 多様性と創造性の都市ベルリンは、欧州の文化首都として成長を続けています。冷戦の終結、壁の開放、そして東西ドイツ統一がインターネットのグローバル化に道を拓いたとすれば、ベルリンはインターネットのもうひとつの原点といえる場所です。1990年代のインターネット第一幕がシリコンバレーを主役としたならば、インターネット第二幕はベルリンが発火点かもしれません。

インターネットの聖地は
シリコンバレーからベルリンへ

ベルリン市発行の「ベルリンのデジタル経済」報告書表紙

 今、インターネットビジネスの聖地シリコンバレーが揺れています。シリコンバレーには2万4000のスタートアップ企業がある(※1)とされていますが、この30年の間、アメリカのスタートアップが減少していたことが最近の調査で明らかになったのです。そして、この10年で急落しています(※2)

米国カウフマン財団の最新報告書は、米国における企業数が、1990年代以降減少していることを示しました。さらにブルッキングス研究所の調査によると、米国のいわゆるビジネス起動速度(全企業活動における新会社の数)は1978年以来、ほぼ半分に低下していることが判明したのです。

2016年5月の報告によれば、ベルリンのデジタル経済規模は110億ユーロ(日本円で1.3兆円)で、これはベルリン経済の5%を占めます。昨年、ベルリンは世界のスタートアップの成長指数トップと評価され、有望なスタートアップが年に500以上生まれています。全欧州のベンチャーキャピタルからの投資総額は2億3000万ユーロ(約261億4000万円)。ベルリンはスタートアップを育むさまざまなインフラが整備されています。特に毎年400を超えるデジタル系文化イベントが開催され、世界有数のインターネット関連イベントである「ベルリン・ウェブ・ウィーク」に毎年訪れる専門家の数は2万人にのぼります。ベルリンは若き起業家を育む大学都市でもあり、毎年1万5000人のIT系学生が学び、その内13%が外国人学生です。

ベルリン・ウェブ・ウィーク2016。毎年6月、ベルリン市内の複数会場で大規模に開催される

 欧州の投資家、ロベルト・ボナジンガ氏は、「次のFacebookはベルリンから生まれる」と述べます。これは、イノベーションとスタートアップ文化が、シリコンバレーからベルリンにシフトしているだけでなく、欧州連合(以下EU)で2018年施行が決定したEUデータ保護規則が、FacebookやGoogleなど、シリコンバレーのIT巨人に大きな影響を与えることを示唆しての発言だったかもしれません。

(※1)https://angel.co/silicon-valley
(※2)http://www.nber.org/papers/w21776

武邑光裕(たけむら・みつひろ)[クオン株式会社 ベルリン支局長]

メディア美学者。武邑塾主幹。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学情報デザイン科、同大メディア美学研究センター所長、東京大学大学院新領域創成科学研究科、札幌市立大学デザイン学部(メディアデザイン)で教授職を歴任。2015年より現職。専門はメディア美学、デジタル・アーカイヴ情報学、創造産業論、ソーシャルメディアデザイン。著書『記憶のゆくたて デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。2015年よりクオン株式会社ベルリン支局長。2016年、取締役就任。


ソーシャル グローバルトレンド

ヨーロッパ各国から様々なクリエイターやテクノロジストが集まる街、ドイツ・ベルリン。この街を訪れると、自ずとソーシャルビジネスのグローバルトレンドを垣間見ることができます。本連載では、ベルリンに在住する著者が現地で見た、ソーシャルビジネスの最前線を紹介します。

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